作家・室井佑月氏は、代表選の一コマから民進党の今後のあり方や課題が透けて見えるという。

*  *  *
 
 民進党の新代表が蓮舫さんに決まった。

 蓮舫さん、前原さん、玉木さん、3人の候補が面白すぎたんですけど。

 この3人、候補者集会で地方をまわっていたらしい。

 らしい、と書くのはもうはじめの会見で「ダメだこりゃ」と感じてしまったので、彼らの記事をほとんど飛ばし読みしていたからだ。

 けど、それはもったいなかったかもしれない。たまたま読んだ9月7日の朝日新聞デジタルの記事に、思わず噴いてしまったよ。

 まず、写真。その下には、〈「私は前原さんには謝ってもらいたくない」と涙ながらに訴える玉木雄一郎氏〉。ぷぷぷ。

 なんでも、7日に行われた候補者集会で、冒頭、前原さんが今では恒例になっている謝罪をした。旧民主党時代の政権運営失敗の、戦犯の一人は私です、ってやつよ。

 その次にマイクを握った玉木さんが、それに反論。前原さんの手柄、羽田空港国際化やビザ取得緩和などを取り上げ、

「私は前原さんには謝ってもらいたくない」

 と泣いたみたいだ。

 それを見ていた蓮舫さんが、

「玉木君、男が泣くな!」

 と叱った。

 古い青春ドラマみたいだな。

 記事はここまでしか書いてなかったが、あたしにはこの後、3人で肩を組んでぎこちなくスイングし、《青い山脈》を歌っている姿が見えてきた。

 なぜか、想像の前原さんと玉木さんは学ラン、蓮舫さんはセーラー服であった。

 そして3人は拳を握りしめ、口々に叫ぶのだ。

 
「政策が違うところと一緒に政権を目指すことはありえない!」

「政権を担うには基本的な考え方が一致しなければならない!」

 甘酸っぱっ。甘酸っぱすぎますぞ。

 この甘酸っぱさで、安倍政権の暴走が止められるのか?

 どこと組むのは嫌だとか、まだ選択肢があると思っているところが甘いのだ。そんなことは勝ってから抜かせ。今は心配は無用です。ひょっとして、もうそっから笑かそうとしているのか?

 民進党の人々は、9月4日付の東京新聞の「4野党共闘なら議席2倍に 次期衆院選小選挙区 本紙試算」という記事を読んだかな?

 民進、共産、生活、社民の野党4党が、衆院選小選挙区でも候補を一本化した場合、〈野党四党側の勝利は前回の四十三選挙区から、二・一倍の九十一選挙区になる〉という記事だ。

 安倍政権打倒の希望は、やはりそこにしかないように思う。

 あなたたちは安倍政権の暴走を止めたいの? 増長させたいの?

 民進党は、新しいゆるキャラを募集している場合か? あたしから見たら党自体、十分にゆるいんですけど。もう制服着た3人が、党のキャラクターでいいんじゃね?

週刊朝日 2016年9月30日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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