成年後見制度の落とし穴とは…(※イメージ)
成年後見制度の落とし穴とは…(※イメージ)

 判断能力の衰えた老人を狙い、家電や金融商品を押し売り…。彼らにとって、特に認知症患者はいいカモ。そんな認知症患者を守る“最後の砦”とされているのが成年後見制度だ。判断能力が衰えた人でも、後見人をつければ、財産管理や行政手続きなどを代行してもらえる。後見人は、後見を受ける人が結んだ不利な契約を取り消すこともできる。今年4月には成年後見制度利用促進法が成立した。

 だが、この制度には落とし穴もある。成年後見制度には「任意後見」と「法定後見」の2種類がある。詳しくは後述するが、任意後見は、判断能力があるうちに本人が後見人を選任する。

 一方、法定後見は判断能力の衰えた本人に代わって近親者などが家庭裁判所に申し立て、家裁が後見人を選任する。その場合、弁護士や司法書士が選ばれることも多い。ただ、弁護士や司法書士であれば第三者の立場で中立的に仕事をしてくれそうだが、実際には悪質な専門職の後見人に悩まされているケースが増えている。

 東京都内に住む50代の大村純子さん(仮名)は、突如として降りかかった災難に、途方に暮れている。

 事の発端は今年2月だった。何の面識もないA弁護士から突然、身に覚えのない通達が書面で届いた。そこには、大村さんの父親の財産管理を、今後はA弁護士が担当すると書かれていた。大村さんは言う。

「何でこんなことになったのかわからず、家裁にも連絡したのですが『弁護士と話し合ってください』と言われるだけ。その後は、父親の銀行口座からお金を引き出すこともできなくなってしまいました」

 思い当たる節はあった。今年の正月、妹と会ったときのことだ。大村さんの父親は、所有するビルの賃貸料の収入で老人ホームの施設費や医療費などを支払っていた。ただ、父親が高齢になったこともあり、今後はビルの名義を法人化して管理したいと思っていた。それに妹が強硬に反対。法人化の話は棚上げになった。

「そのころから妹は、父親の財産管理をするために自分が後見人になろうとしました。両親が亡くなったときの相続財産が減ってしまうと警戒したようですが、法人化すれば節税効果も期待できますし、相続権も残るので、誤解なのに……」

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