石破茂・元防衛相「シン・ゴジラ」“防衛出動”苦言の真相を語る (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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石破茂・元防衛相「シン・ゴジラ」“防衛出動”苦言の真相を語る

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映画から得た教訓を語る石破茂衆院議員(撮影/写真部・加藤夏子)

映画から得た教訓を語る石破茂衆院議員(撮影/写真部・加藤夏子)

石破:映画のエンドロールで「協力」のところに、防衛省大臣官房広報課とあった気がしますが、あえて法的なサポートはしなかったのかなと思いました。映画として防衛出動にした意図は別にあるのだと思うからです。しかし現実に即して言えば、ゴジラが外国勢力の意を受けて日本に来襲していることが明らかでない限りは、「武力の行使」の対象にはなり得ず、防衛出動には当たりません。

「災害派遣では、強力な火力が使えないではないか」と反論する人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。自衛隊の行動の根拠が災害派遣であっても、害獣を駆除するために使う火器の種類は法的に限定されていないからです。ゴジラに対してミサイルを撃とうが、10式戦車で攻撃しようが、それは害獣駆除のための「道具の使用」に過ぎません。

 しかも、防衛出動は国会の承認が必要になり、相当な時間がかかります。それを要しない災害派遣がいちばん迅速に対応できるのです。私ならば自衛隊を災害派遣したうえで、兵器を使ってゴジラを駆除する方法を選択します。

 あまり知られていないと思いますが、実は強い火力を使った自衛隊による「害獣駆除」には前例もあります。昔、北海道でトドが魚を大量に捕食し、地元漁民に大変な損害を与えているとして、航空自衛隊のF-86戦闘機が出動し、トドを撃ったことがあるのです。

 福田康夫内閣で、町村信孝官房長官が「UFOは存在すると思う」と発言されたことがあり、防衛大臣だった私は記者会見でその受け止めを聞かれ、UFOのついでにゴジラの来襲についても答えました。

 フィクションは、「ふつうでは起こり得ない事態」として見落としてしまいがちですが、極限的な事例の想定にはある意味うってつけです。危機管理はあらゆる事態への事前の想定とそれに基づいた運用、訓練が要諦(ようてい)です。災害派遣であれ、防衛出動であれ、政府全体としてどう行動すべきかをシミュレートするいいきっかけとなればと思います。

――首相や官房長官、防衛大臣らは避難のため官邸をヘリで飛び立ち、立川広域防災基地を目指す。しかし、ゴジラの熱線を浴びてヘリは撃墜され、多くの閣僚が死亡する。はたして危機管理上の問題点はなかったのだろうか。

 本来なら閣僚たちは何機かに分乗していくべきですが、相当差し迫ったシーンでしたし、それまではゴジラも背中から放射線ビームは発していませんでしたからね。撃墜は「想定外」だったのでしょう(笑)。映画では、農林水産大臣が内閣総理大臣臨時代理になっていましたね。総理大臣臨時代理の継承順位は、内閣法で5番目まで決まっています。前の第3次安倍内閣で言えば、1番目が麻生太郎副総理兼財務相、2番が菅義偉官房長官、3番が甘利明(経済再生担当)大臣で、私が4番目だったかな。映画は「5人までは決めているけど、それ以上死んだらどうするの?」と。

 小松左京の『首都消失』という小説に、全国知事会が臨時政府を設置するくだりが出てきますね。たとえば、閣議をやっているときに、官邸がミサイル攻撃を受けたら閣僚は全員死ぬことになりますが、そこは「想定外」でしょうと。できる限り「想定外」をなくすためには、極限事例について議論しなければなりません。それが防衛や防衛装備の話だったりすれば、また防衛オタクだ、軍事マニアだと揶揄(やゆ)されるから、ギリギリと詰めて考えることを議員も官僚もやらないところがあります。マスコミがおもしろおかしく書くから、フィクションを真に受けるなんてバカバカしい、言うのをやめておこう、となる。しかしこのままだと「想定外」の繰り返しですよ。

週刊朝日  2016年9月9日号より抜粋


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