ヒロミ:ああ。タオルもそうですが、たとえばトレーニング中に水がなくなっても、みなさん意外と買わないんですよね。脱水症状になると困るので最初の水をサービスでつけると、2本目もタダだと思って持って帰っちゃう。そういうことを十何年で徐々に変えていって、今はうちも売っています。

林:経営者として、一つひとつ積み上げていったんですね。

ヒロミ:そうじゃないと、なかなか利益なんか出ないんですよね。

林:いま芸能界に戻ってギャラを見ると、ジムやってるのがバカバカしくなったりします?

ヒロミ:僕もトレーナーとしてやっていたんですが、一生懸命しゃべって教えて汗をかいて気持ちよく帰ってもらって、1時間6500円なんですね。今は料金も変わってます。僕も芸能界で生活してたときは、それなりにすごいお金をもらってましたから、6500円もらうのってこんなに大変なんだというのを味わいました。いちばんいいのは芸能界だと思います。しゃべるだけであれだけお金くれるところ、ないですから。

林:うらやましいです。今は出版不況ですし、作家も本を書くより「作家です」と名乗ってテレビのコメンテーターやるほうがよっぽど儲かると思いますよ。しかしそういうのも長続きするかどうかというと……。

ヒロミ:違うことをやってからテレビの世界に戻ると、やっぱり芸能界はすげえなと思ったりします。ジムを始めたときは、従業員に給料いくら払えばいいのかとかもわからなかったんですよ。「こんなんで生活できるの?」みたいな。今は適正ですけどね。感覚がズレてましたから、勉強になりましたよ、ほんとに。

林:私、家にトレーナーさんに来てもらっていたことがあるんですが、その人はどこかのジムをやめて独立した人だったんです。そういう人も多いんですか。

ヒロミ:たいていそうなっていくんですよ。場所をつくって提供して、そこそこになるとお客さんごと持って出ていく。これが定番なんです。芸能界のほうが、義理とか筋とか大事にしますね。勝手に事務所やめて他のところにいくとか、あり得ないですからね。一般社会では、あまりそういうことにこだわらないんだと思いましたね。

週刊朝日 2016年9月9日号より抜粋