豊:男は騙されると思いますよ。男女の恋愛には異性との距離感ってあるじゃないですか。それがちょっとずれたりはみ出したりすると、年齢に関係なく意識が恋愛に行っちゃう気がする。そういうのを本能的に持っている人ってモテると思うんですよ。だからこそ、柏木が小夜子をスカウトして自分の結婚相談所の切り札にしているわけだから。

大:この映画を見てふと思ったの。「夫の定年後がイヤだわ」と思っている女性たちって、いわゆる“後妻業”なのかなって。だって、お金のために一緒にいるわけだから。「早く死なないかしら」「脂っこいものばかり食べさせよう」とか思っている妻たちって世間に少なくないわけでしょ? 普通の奥さんたちが後妻業になっているかもって。世の男性たちよ、気をつけよう(笑)。

豊:でも、奥さんたちがそう思うのは、男性たちにも責任があるんじゃないの?

大:絶対そう。60%くらいは男性が悪いと思う。

豊:男がみんな悪いんだよ。人間の感情なんて積み重ね。奥さんがそうなったってことはダンナに責任があったんだと思っちゃうな。

大:エライ! 豊川さんは映画を見て、騙されないようにしようと思った?

豊:僕は、騙された男たちはそれなりに幸せだったんじゃないかな、って思うところがどうしてもあるんだよね。自ら騙されにいった、ってわけじゃないけど、そこまでしても小夜子との時間を過ごしたかったんじゃないかな。結果的に1時間100万円とか150万円とか払う計算になるんだろうけど(笑)。映画に「ジジイを騙すのは功徳だ」みたいな台詞があるけど、意外と納得できるんじゃないかなぁ。そう思えるからこそ、柏木もこういう仕事をやっていけるんだと思うんだ。

大:演じていて毎日楽しかったな。撮影中は生き生きしてたもん。絶対負けないし、私に不幸が訪れるわけがないと思って演じてたから(笑)。でも、考えればこの映画は怖い話なのよね。原作がハードだけに、これをコメディー仕立てにした鶴橋さんはすごい。それを許した原作者の黒川博行さんも度量が深い。みなさんに大笑いしてもらった後、「あれ、ちょっと待って」と考えてもらえればうれしいですね。

週刊朝日  2016年9月2日号より抜粋