さらに「テレ東グルメ」の特徴は、おっさんだ。元祖の「孤独」は松重豊、「侠飯」は生瀬、「ヤッさん」は伊原剛志というように、グルメドラマに欠かせないのは、おっさんのうんちく。基本フォーマットは、妥協を許さない男の生き様を描くハードボイルドだから。ある時は輸入雑貨の貿易商が、ある時はヤクザが、ホームレスが、孤独にグルメと向き合う。そして、人生における大切なことを、おっさんたちから叩きこまれる柄本兄弟。すごまれて、涙目で「すんません!」て謝る青年誌ギャグ漫画のような顔面。「うめ~っ!」と飯をほおばる笑顔のリアリティ(リアルすぎて食べ方が汚い。特に弟)。なぜ柄本なのかを、納得する。

 ついでに「侠飯」は、「孤独のクックパッド」としても機能する。いわく「炒飯は、温かい飯を使う方がよくほぐれる。火力が足りなくても、フライパンを煙が出るくらい熱したら、なんとかなる。最初から最後まで強火だ」とか、「特売の肉のスジを切って、すりおろしたタマネギに1時間漬けこむと、A5ランクのステーキに」とか。ちなみに組長が使った「混じりっ気なしの上物の白い粉」は、ブラジル産の岩塩でした。清原もASKAも高知も、くさい飯より美味い飯が食いたいはず。

週刊朝日 2016年8月26日号