結婚して息子が生まれたとき、『この子は、頑張ってもせいぜい俺ぐらいにしかなれないだろう。でも、俺ぐらいになれるなら、何とか生活はできるだろう』と思って、ふっと肩の力が抜けた。そこから、“もっとふざけて生きてもいいか”と開き直れて(笑)、一気にラクになりました」

 精神的に余計なものが削ぎ落とされていくにつれ、なぜか肉体には余計な脂肪がどんどんついていったらしい。でもそのインパクトのあるビジュアルが、役者としての存在感につながっていることは間違いない。

「芝居をやっていると、思い通りにいかないことのほうが多いけれど、それが好きなのかもしれない。全然カッコ良くないのに、好きな人の前ではめいっぱいカッコつけてみたり、モテたいと思って頑張ったり……。人間って、女々しさや下心や勘違いがあるから面白いんですよね」

 シアターコクーンでの新作は8年ぶりとなる松尾スズキさんの舞台で、皆川さんは、振付師やおばさんなど、一人で何役にも挑戦する。

「登場人物は、強欲な上に空気が読めない人ばかり(笑)。でも、自分の欲望に対して正直に生きている様は、痛快なんじゃないかと思います」

週刊朝日  2016年7月15日号