経営悪化に伴い、6月に引責辞任したベネッセホールディングスの原田泳幸前会長兼社長には、2億3400万円が支払われた。前年の1億4200万円より多かった。

「初年度は基本報酬のみの支払いだったのが、2期目はストックオプションと賞与が支払われたため、額が増えました。賞与は業績悪化を考慮した額を支給しています」(ベネッセホールディングス広報・IR部)

 高い経営手腕で企業を渡り歩く「プロ経営者」は、高額報酬を受け取る一方で、結果を出せなければ退く。16位の藤森義明氏も、経営不振でLIXILグループ社長を退任した。

 近年は、退職慰労金を廃止する企業が増える一方で、固定した基本報酬の割合を減らし、業績に連動して報酬を支払う企業が増える傾向だ。

 背景には、15年から適用された「コーポレートガバナンス・コード」がある。上場企業が株主との対話や経営の透明性を求めるための指針。役員報酬は適切な割合で業績に連動するべきと定められていることが影響しているとみられる。

 株式を使った報酬では、一定期間の保有を義務付けたり、在任中は信託銀行に預けるといった条件を付けるなど柔軟な設計が可能だ。短期的に株価を高めて売り抜けるのではなく、中長期的に企業価値を高める動機付けを持たせる企業もみられる。

 役員報酬は、今後どうなっていくのか。外国人役員への報酬は上がり続け、日本人役員や従業員との差が開き続けるのだろうか。

「欧米でも極端な高額化への批判が強くなっているうえ、不祥事などが発覚した場合には報酬の一部の返還条項を契約に盛り込む例も増えています。青天井で高額化していくことは、考えにくいでしょう」(前出の藤島氏)

 好業績は、経営環境の要因が大きいのか、経営改革によるものなのか。個々の役員がどれだけ貢献できているかもより問われる時代。例えば、円安が追い風の業界の場合、どんなに増益を果たしても同業他社の水準を下回った会社であれば、役員への評価は厳しくてもよいはずだ。

 藤島氏は「業績向上が役員の手腕によるものかどうかも、評価基準の見直しを含めて公正・公平に評価する必要がある」と話す。働きぶりに見合い、株主も従業員も納得する報酬でないと、経営陣と従業員の溝が深まってしまう。

週刊朝日  2016年7月15日号より抜粋