「いたっ」。縦横無尽に泳ぎ回る精子たち! まずはひと安心か。翌日、TENGAの佐藤雅信取締役を訪ねた。

「メンズルーペはあくまで雑貨品です。医学的判断はできませんが、不妊の原因が男性にもあるということを意識していない層に“気づき”を与えたいんです」

 一方、リクルートライフスタイルは、都内で精子セルフチェックサービス「Seem」のテスト販売を始めた。キットの内容はメンズルーペとほぼ同じだが、こちらはスマホのアプリを同時に使うのが売り。アプリで撮影後、動画を自動解析し、精子の濃度と運動率を算出してくれる。

 これは試すしかあるまい。再び深夜のリビングでズボンを下ろした。精液をレンズにセットし、アプリの測定ボタンを押す。元気いっぱい動いていた、大丈夫なはずだ……。1分ほどで結果が出た。「運動率17%」。焦燥感が全身を襲う。WHOが示す標準値は40%が目安だからだ。嫌な汗が背中を伝い、祈る思いでもう一度測定。今度は「60%」。開発した同社の入澤諒氏に聞いた。

「限られた範囲での観察や測定なので、結果にズレが生じる可能性はあります。体調によって精子には差があるので、1回の測定で一喜一憂せず、何回も測って観察してほしいですね。医学的診断に代わるものではないので、気になる結果が出たら医療機関で受診を」

 だが妊活を意識する前に、記者はパートナー探しに奔走せねば。ズボンを下げた深夜のリビングとは異なる空しさが襲ってきた。

週刊朝日  2016年6月10日号