2カ所目は、田園調布駅から徒歩10分ほど。環状8号線から細い路地を入ったところにある高級住宅街だ。もともと定員161人と大規模な認可保育園が今月開園予定だった。反対運動をする周辺住民との話し合いで、定員を145人に変更。紆余曲折を経て来年4月に開園する方向だ。

 地域住民によると、昨年春ごろから説明会が開かれ、「周辺道路は道幅が狭く、見通しがきかない坂道で通園には危険。不適切な立地だ」「子供の送迎時の事故の危険性で住環境が一変する」など、反対の声で紛糾。昨年5月に、コンビニエンスストア・スリーエフの中居勝利社長が世話人となり、<保育園整備計画(仮称)反対表明文~署名にご協力のお願い~>と書かれた紙が配布された。

「建設ありきで事業者が話を進めていたので、私たちも戸惑いました。ただ、有名企業の社長を務める中居さんが説明会の中で『(この地域に)待機児童なんていない』などと発言したんです。周辺には認可保育園に入れず、やむを得ず月13万の認可外保育園に通わせている親もいるのに……。発言にすごい迫力があって怖く、反論できなかった」(世田谷区の女性)

 数回開かれた説明会では、「この周辺は保育園が少なく、子供の預け先が見つからないと、仕事をクビになってしまう。認可保育園をつくって」と涙ながらに訴えた母親もいたという。保育園探しに大変な思いをした30代の区民はこう語る。

「保育園探しに苦労した経験から、涙を流す参加者もいました。私も臨月や産後1カ月で、保育園探しに翻弄(ほんろう)されて非常に大変だった。少子化と言われながら、そこまでしても認可に入れないことが問題。働き方や会社の制度が変わってほしい」

 近隣住民とともに保育園新設の問題に“反対”していたという大野元防衛庁長官と、中居社長。真意を伺おうと、直撃を試み、手紙でも尋ねた。大野氏から回答はなかったが、中居社長が締め切り直前に取材に応じた。

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