今回の事件をたどると、この衆院選前後に表面化した田母神容疑者の愛人問題にたどりつく。妻と泥沼の離婚訴訟となり、政治資金から「愛人に数十万円のコートを買った」との疑惑も取りざたされた。本誌が当時、田母神容疑者の携帯電話を鳴らすと、編集部に折り返し電話がかかってきた。
「今交際している女性を守らないといけない。(妻とは)もう不愉快で一緒にいられない。僕は逃げも隠れもしない。堂々とします」
田母神容疑者とのやりとりは20分ほど。「これって本(週刊朝日)を送ってもらえるんですか」。過激な言動とは裏腹に、謙虚さが印象深かった。
逮捕を受けて田母神容疑者側近はこう振り返った。
「田母神さんは、報酬を支払うことが、法に触れるなど深い考えはなかった。(同容疑で逮捕された)選対事務局長に『通例だ』と言われて、細かなことに口出ししなかったようだ。親分肌で格好つけて、『よう頑張ってくれたから、払ってやった』などと現場の運動員に口にしたから失敗したのです」
逮捕前に聞いた田母神容疑者の言葉が忘れられないという。
「犯意がなく次期選挙も考えていた自分に、なぜこのタイミングで捜査なのか」
空自トップにまでのぼりつめた“愛国者”は初めて、権力の怖さを知ったのかもしれない。(本誌・牧野めぐみ)
※週刊朝日 2016年4月29日号