外気温は16度、決して暖かくはない。毛布にくるまって道端や駐車場などに座っている人たちが街中のいたるところにいる。

 余震が怖くて眠れない。でも家の中は危ない。しかたないから朝まで外にいようということらしい。深夜でも、公園のトイレには行列ができていた。

 運転していると、携帯の緊急地震速報アラームがほぼ5~10分おきぐらいに鳴る。ラジオからは、「橋が落ちた」「火災が起きた」「建物が倒壊した」とのニュースが途切れなく入り、落ち着かない。その上、あちこちのプロパンガスが漏れているらしく、街じゅうがガスくさい。

 しばらくすると、阿蘇地方で大規模な倒壊が起き、閉じ込められている人が大勢いるとの情報が入った。急遽、進路を変え、阿蘇に向かった。

 だが、暗い山道のところどころで落石やがけ崩れ、道の崩落が起きていて、先へ進めない。ポツポツと配備された警察官らも状況を把握できていないようで誘導もできない。結局2時間近く迂回路を走り回った。

 午前7時過ぎにようやく南阿蘇村に到着した。

 通行止めゲート手前に車を止め、警官に取材と断り、2キロほど歩いて上る。

 すると、20人ほどの大阪府警特別救助班が、倒壊した家に取り残された60代の女性の捜索を始めるところだった。

 隊員たちが倒壊でめちゃくちゃになった2階から入り、チェーンソーで柱などを1本ずつ取り除きながら、1階にいるはずの住人を捜す。大きな余震が来れば、2階部分が倒壊するかもしれない。作業は命がけだ。

 心配そうに見守る家族。1時間ほど作業が進んだ時、飼い犬のチワワが救助された。元気なようだ。

 続いて住人の女性が担架にのせられて搬出されるが、安否はわからない。すぐに病院に運ばれた。

 南阿蘇村では「阿蘇大橋」が崩落し、隣接する東海大学体育館では約千人が孤立(16日午後現在)。同学生寮6棟は倒壊し、農学部学生十数人が生き埋めになり、男女2人が死亡した。

 余震はまだ、続いている。住民の不安が解消されるのは、いつになるのだろう。

週刊朝日 2016年4月29日号