世田谷区長保坂展人(c)朝日新聞社
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世田谷区長
保坂展人
(c)朝日新聞社

 世田谷区長の保坂展人氏は、野党には年金や子育て支援で政策を一致させて共闘して欲しいという。

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 安保法の廃止という野党の結束軸は大変重要ですが、それだけでは国民へのアピールが足りません。

 国民の関心事のトップは社会保障制度です。年金や子育て支援など福祉分野で、政策の一致が見いだせるのではないか。誰もがうなずくような改革案を盛り込み、「3大共通ビジョン」として掲げるのです。

 例えば、年金資金の株式市場でのハイリスク運用に歯止めをかけるべきです。昨年、短期間のうちに7.9兆円もの運用損を出しました。それなのに政府は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式の直接運用をもくろんでいます。国民の支払った年金保険料が株価つり上げに利用される。将来給付に影響しかねない年金の“消失リスク”を回避するために、GPIFを国民の監視下に置くことが必要です。

 次に子育て支援。世田谷区でも待機児童問題に苦闘しており、この4月、1250人分の認可保育施設を整備します。しかし、保育園を増やし続けるのも限界があるし、子どもたちを夜の8時9時まで預かる現状がいいのかという疑問もあります。いま必要とされているのは、乳幼児を持つ親たちを残業させないとか、育児休業中の休業補償を延長することです。経団連は率先して子育て支援に乗り出そうとしません。企業だけでは対応が難しいので、野党が社会労働政策として打ち出していくべきです。

 民進党は保育士の給与を月額5万円アップする政策を発表していますが、私は都市部にあふれる空き家・空き室に着目します。世田谷区では新卒などの保育士さんに対し、上限8万2千円の住宅支援を実施しています。

 野党共闘がこうしたビジョンを国民にはっきりと示せれば、政権交代への橋頭堡(きょうとうほ)となるはずです。

週刊朝日  2016年4月8日号