オープン戦も始まるプロ野球西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、優勝するためには即戦力を見極めることが大切だと言及する。

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 3月にはオープン戦も本格化し、ベテランを含めた主力陣の調整にも力が入ってくる。とりわけ、各球団の監督が気にしているのは、新戦力の動向だろう。1軍入りのかかった選手もそうだが、大卒・社会人で獲得した即戦力候補が1軍レベルにあるのかどうか──。今季の戦力を占う意味で、期待と不安が交錯していることだろう。

 特に今年は、大学・社会人の即戦力投手をドラフト上位に指名した球団が多い。セ・リーグだけを見ても、巨人・桜井俊貴、ヤクルト・原樹理、広島・岡田明丈、DeNAの今永昇太がドラフト1位だ。

 150キロ超の速球でねじ伏せるパワーピッチャーというよりは、制球や緩急を交えた総合力で勝負する投手がそろっている。報道を見る限り、どの投手も順調に調整できているようだが、ここからが本当の勝負だ。監督の観察眼は3月から鋭くなってくる。

 2月は、投手のほうが調整が速い。3月上旬から中旬になってようやく、打者の調整が上がってきて、主力選手も打席での集中力が増してくる。監督としては、その時期になって初めて投手の総合力を確認することができる。一つひとつの球種に対し、打者がどんな反応を示すか。空振りを取れる球種なのかどうか。

 走者を背負ったときのマウンドでの落ち着き具合や対応力も、この時点で見えてくる。ブルペンでは勢いのある球を投げていても、打者が立つと実力を発揮できない投手もいる。

 
 かつての巨人・上原浩治のように、キャンプ序盤のブルペン投球を見ただけで、開幕ローテーションを即決できるだけの力を持った新人投手はまれだ。現時点で、プロで1球も投げていない投手を開幕ローテーションに抜擢するには勇気がいる。それだけの理由を探す必要がある。だからオープン戦では、内容とともに結果を求める。私も西武の監督時代、高卒の松坂大輔を開幕ローテーションに入れる理由が必要だった。1回でいいから結果がほしいと考えていたことを思い出すよ。

 それにしても時代は変わったな。かつては即戦力ルーキーが張り切りすぎてパンクする姿をよく見たが、最近はほとんどなくなった。

 今は、大学・社会人であっても、同世代のプロの選手と日本代表の混成チームで一緒になり、同世代でプロ・アマの壁なく情報共有ができている。自分に何が足りないかといったプロで通用するための術を入団前から知っている選手が多い。ヤクルトでは、首脳陣が原の所属大学での練習の内容をリサーチしたうえで、キャンプの練習プログラムを立てている。アマからプロへの移行期にも気を配り、力を発揮しやすい環境を整えている。

 圧倒的な戦力を誇るソフトバンクは別として、優勝するための戦力向上は、即戦力ルーキーと新外国人選手の活躍にかかっているといっても過言ではない。野球評論家の宿命として、毎年のように開幕前に順位予想をするけれど、新戦力の質をどう判断するかで、順位予想も変わってくるよ。

週刊朝日 2016年3月11日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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