「企業による農業への参入は、農地をリース契約することで何の問題もない。農業大国の米国だって企業の農地売買は厳しく規制しているのに、なぜ、必要なのか。食糧安全保障の視点が欠落している」

 経済界の意向も見え隠れする。国家戦略特別区域諮問会議で農地売買の自由化を熱心に提言しているのが、人材派遣大手パソナグループ会長の竹中平蔵慶大教授だからだ。自民党の農林議員は言う。

「農地売買の一部自由化は、兵庫県養父(やぶ)市で特区として認められている。養父市では、オリックスの子会社が農業に参入しているが、竹中氏はオリックスの社外取締役。自らの会社への利益誘導のためではないか。特区の旗振り役は菅官房長官で、進次郎氏は官邸と経済界の操り人形だよ」

 農林部会長には、官邸の急進的な農政改革のブレーキ役も求められているが、その存在感は薄い。

「進次郎さんは、印象的なキーワードを拾って人を巻き込むのがうまいが、討論はできない。数字の間違いもあるから」(官僚)

 本誌は、進次郎氏に農業政策についてのインタビューを申し込んだが、「ビジネス誌や農業専門紙以外の取材はお断りしています」とのことだった。(本誌取材班 西岡千史、亀井洋志/上垣喜寛)

週刊朝日 2016年3月11日号