松山英樹(23)が米ツアー2勝目をあげた。メジャー制覇に期待がかかるが、丸山茂樹は「そんなに甘くはない」という。

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 エンジンがかかればやってくれるだろうと思ってましたけど、思ったより早く最高のニュースが飛び込んできましたね!

 松山英樹が2014年6月の「メモリアル・トーナメント」に続き、米PGAツアー2勝目を飾りました。日本のスポーツ界にとても重苦しいテーマがある中で、ゴルフ界から明るい話題を発信してくれて、ほんとにうれしいです。

 舞台は「フェニックス・オープン」(米アリゾナ州スコッツデールのTPCスコッツデール、2月4~7日)です。英樹にとって相性のいいゴルフ場で、おととしが4位、去年が2位ときてました。

 3打差の2位から出た最終日は、終始ショットがよかった。ほぼパーフェクトと言ってもいいんじゃないですか? 4日間通算の「パーオン率」は77.8%で出場選手中1位でした。

 最終日17番のバーディーで、27歳のリッキー・ファウラー(米)に並びました。そして迎えた18番。去年の最終日にはプレーオフ進出のかかったパットを外したホールでしたが、今回は下りの5メートルをきっちり沈めてバーディー。ギャラリーのほとんどがリッキーに肩入れする雰囲気の中だったこともあって、相当うれしかったんでしょうね。あの英樹が「ゴルフ人生で一番いいパット」って、自画自賛のコメントしてましたもん。

 リッキーとのプレーオフは4ホール目までいきましたが、英樹は心技体が整ってるように見えました。勝ちへの執念が伝わってきました。それでいて力んでなかったから、しっかりと自分の技術を発揮できた。プレーオフではすべてのクオリティーでリッキーを上回ってたんじゃないですか。

 英樹はこれで自己最高の世界ランク12位ですか。リッキーが4位ということを考えても、英樹の位置とその上はもう紙一重の差しかない。23歳のときのリッキーと比べたら、いまの英樹の方がかなり上だと思いますしね。

 
 これで日本のファンのみなさんは「次はメジャー制覇だ」となるんでしょうけど、僕らからしたら、そんなに甘くはないですよ。ただ、今シーズンでもう1勝できそうな感じは、確実にあります。米ツアー3勝の僕に言わせれば、「とっとと抜いていって」って感じですよ。僕なんか別にたいしたことやったわけじゃないですから。たまたま3勝しただけで。青木(功)さんとかジャンボ(尾崎将司)さんみたいに日本ツアーと両立できたわけでもないし。

 アジア勢のトップが崔京周(45)=韓国=ですから、英樹には10勝を目標に頑張ってもらって、歴史に名を残してほしいな。あとはジャンボさんが長く入ってた世界ランキング10位以内ですね。これも十分に可能ですから。

 まあリオデジャネイロ・オリンピックの日本代表ヘッドコーチという僕の立場からすれば、できたらオリンピックも頑張ってほしいですよ。金メダルだって狙えると思うんです。何十カ国から選手が出てきたって、英樹の本当の敵は20人ぐらいのもの。間違いなく最強のアメリカだって、最大4人しか出られないんだから。僕は英樹にも十分チャンスがあると考えてます。

週刊朝日 2016年2月26日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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