フィリピンに到着した26日。両陛下は、青年海外協力隊員らと熱心に懇談後、マニラ湾をのぞむホテルの庭で夕日を鑑賞された(撮影/写真部・馬場岳人)
フィリピンに到着した26日。両陛下は、青年海外協力隊員らと熱心に懇談後、マニラ湾をのぞむホテルの庭で夕日を鑑賞された(撮影/写真部・馬場岳人)

 戦後50年の節目に始まった両陛下の慰霊の旅。長崎、広島、沖縄を経て、60年のサイパン、昨年のパラオに続き、71年を迎える今年、激戦地であったフィリピンの土を踏んだ。

 1月29日。天皇、皇后両陛下は、マニラ郊外のカリラヤに立つ「比島戦没者の碑」に日本から持参した白菊の花をたむけ、黙とうした。約150人の遺族や生還兵らも静かに見守った。

 27日には、フィリピン人の戦没者が眠る「無名戦士の墓」に向かい、深く頭を垂れた。

 日米両軍の激戦地であるフィリピン訪問は両陛下の強い願いで実現した。日本側の犠牲者は51万8千人、米軍兵士は1万6千人、巻き添えになったり無差別に殺されたりしたフィリピン人の犠牲者は111万人とも言われる。かつて皇后さまは、サイパン慰霊の旅での体験を側近に述懐したことがある。黙礼を終えた時に、目の前を飛び去った数羽の渡り鳥を死者の魂にたとえた。

「この場所で命を落とした人びとの魂が想いを残して、いるように感じました」

 フィリピンの地でも、英霊の魂が通り過ぎたのだろうか。

週刊朝日 2016年2月12日号