使っているのは懐かしのimac。「下絵をスキャンし調整するだけなので、これで十分です」(撮影/写真部・堀内慶太郎)
使っているのは懐かしのimac。「下絵をスキャンし調整するだけなので、これで十分です」(撮影/写真部・堀内慶太郎)
投稿された作品は控えとしてファイリングし、手元に残している。現在のファイルは4冊目(撮影/写真部・堀内慶太郎)
投稿された作品は控えとしてファイリングし、手元に残している。現在のファイルは4冊目(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 第34回2015年週刊朝日似顔絵大賞は、東京都の村上正剛さん(47)に決定した。そっくりで説得力のある絵が、ゲスト審査員のリリ-・フランキーさんや塾長の山藤章二さんに“名人”と評価された。

 選考会の場で「線に迷いがない。“名人上手”という絵」(塾長)、「この名人が無冠だとしたら大賞にしたい」(リリー・フランキーさん)と評価された村上さんの似顔絵。

「そう言っていただけて嬉しいです。ここ数年は大賞候補になりながらも落選していたので、自分では『何かひとつ足りないのかな』と思っていました」

 村上さんは広島県の出身。高校3年生で描いた掛布雅之の似顔絵は初投稿で初入選。「豪快な一発だ(中略)君はまだ1割打者、考えないで振り回せ」との選評をもらった。この掲載を機に美術を学びたくなり、美大を受験することに。高3の夏から美大受験専門の塾に通い、現役で愛知県立芸術大学に入学。デザイン専攻を卒業し、広告制作会社アイドマに入社した。企業・官公庁のロゴマークやデザインを手がけ、朝日広告賞、読売広告大賞を受賞している。

 落語家や文豪など表情が味わい深い人物にひかれることが多い。仕事柄、似顔絵は方眼メモ用紙を持ち歩き、下絵をスケッチ。電車の中吊り広告や、夜中にテレビを見ながらも描く。下絵はiMacに取り込んで線の微調整と色づけを行う。

「紙で下描き、パソコンで微調整という描き方にしてから、イメージとの差がなくなりました。手描きの場合は中断すると絵の具が乾き、思いどおりに仕上がらないこともあったんです」

 仕事はデザイン、趣味は似顔絵。四六時中、手を動かしているが「どちらも好きなことだから苦にならない」。たとえデザイナーでなくとも、似顔絵は描き続けるという思いから、「社会人」の肩書で投稿している。

「今の目標は品の良さを保ちつつ、線にスキをなくすこと。その人の内面にまで迫るような似顔絵が描きたいですね」

週刊朝日 2015年12月25日号