山藤章二さん(撮影/写真部・堀内慶太郎)
山藤章二さん(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 リリー・フランキーさんをゲストに迎えた35年目の似顔絵大賞。ムサビ出身やイラストレーターという共通点のある似顔絵塾の塾長・山藤章二さんと、絵や文化論、さまざまな深い話が繰り広げられた。

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山藤章二(以下、山):ちょっと絵の話になりますが、2000年くらいからヘタウマ現象が出てきましたよね。うまいよりも下手なほうが、面白いんじゃないかということに不幸にも気付いてから、僕の中で混迷が生じたんです。下手なほうがよほど、大衆が参加できるし、絵も自由だし。

リリー・フランキー(以下、リ):僕はむしろヘタウマ以前の、山藤先生たちのタッチや洒脱さ、教養に憧れていますね。

山:「絵という分際を超えて、何か主張めいたものを文字で付け加える」っていうのが、唯一のよりどころだったんですけど、世の中の大きなうねりの中で、崩壊してきたんですよ。ことわざや雑学や芝居のセリフの本歌取り(パロディー)もあまり受けない。周りの編集者の反応を見ていても、褒めてくれない。孤独です(笑)。

リ:僕は先生や野坂昭如さんたちの時代にコンプレックスがあります。あの時代が王道のメインカルチャー。それに対して、自分たちがサブカルチャーって呼ばれるようになったと思います。

山:なるほど。

リ:でも、今や雑誌文化はメインからサブに移行している。「おたく」と迫害されたものを「クールジャパン」だと、国が推すまでになっている。つまり、サブとメインが逆転したんです。

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