「近くに子どもが住んでいますが、仕事があるのでね……。ここは何かあったらすぐに来て対応してくれる。助かっています」

 今年91歳になった先ほどとは別のTさんも大きくうなずく。

「ほかに言いようがないんですけれど、とにかく“安心”なんですよ」

 こうした、地域での支え合いネットワークを地元で見つけたい。そんなときには「まずは地域包括支援センターに相談を」と助言するのは、『おひとりさまの終活』などの著書があるノンフィクションライターの中澤まゆみさんだ。

 地域包括支援センターとは、地域に住む高齢者の自立を支援する地域包括ケアの拠点で、全国で約4300カ所ある。

「地域包括支援センターというと、介護が必要な高齢者やその家族が来るところというイメージがありますが、自立した高齢者でも何かあれば相談できますし、必要な支援を行っている団体を紹介してくれることもあります」(中澤さん)

 東京都杉並区では「ケア24」という地域包括支援センターが20カ所ある。介護保険の認定を受けていない高齢者でも、急な病気やけがのときに相談すれば、区のホームヘルパー派遣サービスにつないでくれる。サービスの対象外でも、民間事業者やボランティア団体の情報を提供している。

 だが、こうした支援について、知らない高齢者も。

「地域包括支援センターでは、日ごろから地域の行事に参加するなどして、PRに努めています。高齢者から頼りにされるケア24を目指したい」(保健福祉部地域包括ケア推進担当課長の河俣義行さん)

 友人同士で助け合うという方法もあると話すのは、おひとりさまを多く取材してきたジャーナリストの福沢恵子さんだ。

「非婚や早い時期に離婚をした人などは、リスク管理の一つとして、気心の知れた仲間と互助会的なネットワークをつくっています」

 彼らに共通するのは、“境遇が似ていて、価値観は共有できるが、行動は別々”という相手と、つながりを持っている点だ。

「鍵を預け合う関係になるまでは時間がかかる。1年、2年と時間をかけて信頼関係を築き上げているようです」(福沢さん)

週刊朝日  2015年12月18日号より抜粋