住民同士で支え合って…(※イメージ)
住民同士で支え合って…(※イメージ)

 おひとりさまがもっとも心細くなる状況の一つ、それが“病気やけが”をしたときだろう。けがで片手が使えなくなれば料理も着替えもできず、トイレもたいへんだ。寝込めば買い物にも行けない。そうした不便を解消する家事代行サービスなども充実してきたが、集合住宅の住民同士で支え合っているところもある。

「何か買ってくるものがあったら言って」「これ食べてみて」

 東京都江東区にある築35年のマンション、コープ南砂の同じ階に住むNさん(83)、Tさん(77)、Oさん(79)はおひとりさま同士。具合が悪くて外出できないときには、お互いに料理を持ち寄ったり、買い物をし合ったりする。昔ながらの下町のような付き合いだ。コープ南砂ではこんな風景がいたるところに存在する。

 2006年に自治会活動の一環として「助け合いの会」を設立。住民の家事の手伝いや外出介助、住宅設備の保守や修理など、居住者のちょっとした困りごとを支援する助け合い活動を続けている。自治会会員世帯155戸のうち約85%にあたる131戸が会員で、おひとりさまも多い。

「うちはプライバシーとかないんですよ、下町の江戸長屋だから(笑)。病気やけがもオープンにするから、本人も周りもかえって安心、安全なんです」(同会事務局長の小林孝さん)

 具合が悪くなった住民がいたら、緊急でない限り会のメンバーが病院やクリニックに送っていく。必要なときは家事も手伝う。住民への支援は有償で、入会金3千円、年会費千円、利用料は30分で350円だ。無償だと「謝礼に気を使う」ため、あえて有償ボランティアにしている。

 同会が月に2回主催するのが、「ふれあい喫茶室」だ。11月終わりに記者が訪ねると、12人ほどが集まっていた。女性が多く、大半がおひとりさま。参加者のKさん(67)は、笑顔で話す。

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