夫と死別し、2人の子供も自立した増田洋美さん(73)は12年前、都内から長野県軽井沢町に移住した。

「近所の人たちと飲み会を開いたり、町内会の集まりに参加したりして、移住者とも地元の人とも交流をしています」

 移住先は別荘地帯だが、地域住民や農作地も混在している。

「町内会でゴミ拾いや草刈りにちゃんと出るようにしています。町内会や行事に参加しないで『うちのまわりの雪かきをしてくれない』と文句を言う移住者がいますが、地元では変な人だと思われていますよ」

 昨年、人間関係のこじれから町内会をやめたシニア移住者がうつ病になり、家族に引き取られていったこともあったという。

 人付き合いが苦手な人に対して、後藤さんはこうアドバイスする。

「地縁があったり、移住先に相談できる人や頼れる人がいたりするとよいでしょう。自治体の移住相談窓口を利用するのもお勧めです」

 移住先を決めるには、荒木さんのように、移住先に親戚がいるといった地縁があるほか、行政や支援団体の移住相談といったサポートがあるとうまくいくケースが多い。

 一方、移住先の地域とつながりを持たず、情報もないまま移住すると、シニア世代では命にかかわる事態にもなりかねない。

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