加藤:私は息子が幼いころに離婚し、シングルマザーです。誰にも口出しをされず、やりたいように育てることができてラッキーだと考えてきました。働いているので、すべての勉強を見てあげることはできませんが、母子2人だけなので密なコミュニケーションが取れて、状況がよく把握できます。息子は食器を洗ったり掃除をしたりと、率先して協力してくれます。これは人間的成長につながっていると思います。

――みなさんの考え方に相違があっても、愛情の深さという点は同じですね。

佐藤:『受験は母親が9割』という本を書かせていただいて以降、「過保護だ」「子ども自身がめざした道なのか」などと批判を受けることがあります。けれど18歳までに才能をうんと伸ばしてあげて、子どもの手が届く最高の場所に送り込もうと思うことに何の問題もないでしょう。愛情いっぱいにサポートすることが子育てだと思います。

廣津留:120%の愛情を注ぎ、何があってもあなたの味方だという安心感を与えてきたつもりです。それが自信や自立を生み、広い意味での「勉強」にもつながったと感じています。

 今この瞬間、目前にある社会はもう古く、親の価値観も古いわけです。古い社会と親は、若者を後押しする勇気を持つべきです。

加藤:「子どもの意見、自主性を尊重する」とは、非常に良いことのように聞こえます。けれど、子どもに遠慮したり、気を使ったりすることには違和感があります。「勉強はするものだ」「英検は受けるものだ」としてしまえばいいのです。ここで子どもの希望を聞く必要はないと考え、実際、聞きませんでした。親が明確な目標を掲げ、「一緒に頑張ろう」と言いながら進めていくのが子育てだと思います。

週刊朝日 2015年10月16日号より抜粋