味噌ラーメン好きのバレンティン(ヤクルト球団提供) (c)朝日新聞社 @@写禁
味噌ラーメン好きのバレンティン(ヤクルト球団提供) (c)朝日新聞社 @@写禁

「これでわれわれも、王者球団の調理スタッフになれた。誇らしいです」

 そう語るのは、14年ぶりにリーグ優勝を果たしたヤクルトスワローズ戸田寮、食堂係の方々。この寮は、四半世紀前に建てられ、現在20人の若手が生活する。多くの選手と同様、彼らにとっても初めてのVだった。

「寮生にしてみれば、ここは家庭のような場ですから、楽しく食べてもらうことを心がけています」(天方一匡管理栄養士)

 今季、左太腿の肉離れで調整したバレンティンの復帰前日には、彼の好物である味噌ラーメンを作って士気を上げ、本人のホームランをお膳立てした。

 つけ麺好きの雄平がファーム時代、2玉の麺を平らげ、「3杯目は我慢しようかな」と漏らした折には三澤岳明調理師が「食べてみてダメだったら、また考えればいい」と送り出した。3玉を完食したその日、雄平はサヨナラアーチを放っている。

 現在、けがに苦しむ由規も先発として投げる前日は、必ず“勝ち飯”である煮込みうどんをオーダーする。

 西田捕手は1キロのステーキをペロリと食す大食漢だが、今はやや食事をセーブしている。食堂スタッフたちは、押しつけずに、選択肢を示しながら選手への食育を続けている。

 小川投手が、なかなか体を絞れなかった際には、寮の食事以外で口にしている品をすべて聞き出し、本人の意思で間食をやめるよう気付かせた。そして、一人暮らしを始めたときには、フライパンや菜箸などの調理器具と体重計を購入することを勧め、独身男性が作りやすいレシピを手渡した。

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