児童相談所に届かなかった女児の声……
児童相談所に届かなかった女児の声……

 10歳の女児が、長崎県を訴えた。実母と祖母から虐待を受けたのに、児童相談所が適切な措置を取らなかったとして、慰謝料50万円を求める訴訟を長崎地裁に起こしたのだ。児相にどんな不手際があったのか。

 女児は2010年、自宅で母親に左肩をライターで焼かれるなどの虐待を受けたと主張。治療した病院の連絡を受けた児相は、母親を児相に呼んで指導を始めたが、2回しか姿を見せず、そのまま指導を終えていたという。

 この問題を特報した長崎新聞の報道によれば、女児は母にハイヒールで顔をたたかれたり、母方の祖母から髪をつかまれて引きずられたりもした。母はパチンコに夢中で、帰宅は深夜。食事も入浴も不十分で、自宅はゴミ屋敷状態だった。

 異変に気づいた父方の祖母が児相に相談しても、「証拠がない」と相手にされなかったという。女児は昨年、小学校の担任に相談。学校側が児相に連絡し、女児の一時保護を強く求めたが、このときも応じてくれなかったという。

 長崎県の児相を巡っては、昨夏、佐世保市の県立高校1年の女子生徒が同級生を殺害した事件で、佐世保の児相が、逮捕された女子生徒の精神科医や父親から事前に相談されていたのに放置したとして、当時の所長らが懲戒処分を受けた。

 児相の対応に批判が高まり、事件後は相談者の声に丁寧に耳を傾けるようになった……はずだった。

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