女児の訴えは、児相の対応が相変わらず鈍いことを示唆している。だが、今回の件について、児相を所管する県こども家庭課の担当者は、取材にこう答えた。

「当時の状況の聞き取り調査を進めているが、適正な措置がなされたと思っている。裁判では争っていく」

 いずれにせよ、被害者の子ども自身が原告となる例は極めて珍しく、裁判の行方に注目が集まっている。

 NPO法人「チャイルドファーストジャパン」(事務局・神奈川県伊勢原市)理事長で医師の山田不二子さんは言う。

「10歳であれば、自分の気持ちを伝えることができ、訴訟能力があると思う。日本では、保護者は児相の措置に不服申し立てができるが、児相が子どもを守らなかった時に子どもの権利を代弁する制度がない。今回は子ども自身が『なぜ私を守ってくれなかったのか』と訴えた。その不平等な制度に風穴を開ける画期的な訴訟だと思う」

週刊朝日  2015年10月2日号