日本にとっては、この決断は戦後の歩みを大きく変えるものです。野球に例えるなら、高校野球を卒業し、世界を舞台にしたメジャーリーグに入ろうとしているようなもの。戦後70年も戦争をしてこなかった日本に、それができるのか。米国は、第2次大戦後も何度も戦争をしてきたことから、戦争の大変さを身をもって知っています。日本にその認識があるのか。私は不安を感じています。

 イラク戦争の開戦時には、ドイツとフランスは米国と対立してでも、開戦に反対した。日本は、再びイラク戦争のようなバカな戦争への参加を米国から求められたら、ケンカをしてでも「反対」という結論を出せるのでしょうか。

 議論すべきことはたくさんあるのですが、政治的には今は安倍首相の一強状態で、野党をはじめとする反対勢力の力が弱いのが問題です。それでも、メディアが権力の批判勢力として健全に機能していればいい。権力が暴走したときに、メディアがきちんと批判すれば、それがやがて世論になっていくからです。ところが、安倍政権を正面から批判しているメディアは、地方紙や週刊誌がほとんど。大手紙やテレビ局は、安倍首相に批判的な記事を書くことを怖がっているように思えます。

 本当は、原発問題でも新しい安保法制でも反対派が多数を占めています。昨年の総選挙で、自民・公明の与党が得た比例区の得票も、全国民の約2割にすぎません。それでも、安倍政権に反対する意見は、政治に反映されることはありません。日本はいま、あらゆるところがマヒしているように見えます。

(本誌・平井啓子、永野原梨香、西岡千史/松元千枝)

週刊朝日  2015年9月25日号