――歌詞のテーマは現代社会を色濃く反映したものが多いですね。例えば「ファー・アフガニスタン」にこめた思いは?

「戦争という殺し合いの場に行くこと、その心境とはどんなものなのか、それについて考えることをやめられなかったんだ。人間が置かれる極限的な状況ではないかと思う。どんな心境なのだろうという尽きない興味が湧いてきた。それを曲にしたんだ。とはいえ僕に兵士の心境は理解できないので、想像するしかなかった。考えるのがやめられなかったから曲にしたんだ」

――本国アメリカや世界中のファンがあなたの言葉に耳を傾けています。

「今、自分が必要とされるかどうかわからないんだ。チェイニー/ブッシュ時代は僕には困難の時代だった。バラク・オバマが選出されることは僕にとって非常に重要なことだった。でも、僕は政治的シンガーではない。政治について考えることは多いが、エキスパートではない。一市民として、援助してほしいと言われればノーと言えなかった。オバマ・キャンペーンには2度参加している。人は僕が民主党支持者だと知っているから。実際の僕は民主党よりもずっと左寄りだが、できるだけそういう人を増やすのは重要なことなんだ。というのは米国は右寄りに傾く傾向が強い。それでは進歩ではないと思う。それが僕の政治観だよ。勿論ひとりひとりが自分なりの意見を持つということを認めるが」

――ポール・マッカートニーなど同世代が現役で頑張っていますね。

「自分はつくづく幸運だと思うよ。音楽がやれて、ファンもいて。若いころの中毒などの問題があったにもかかわらず死なずにここまで生きていられたことに感謝している。その感謝の気持ちが僕の中では一番大きい。奇跡だよ。だから可能な限り、アルバムを作り、ツアーを続けたいんだ」

(音楽ライター・高野裕子)

週刊朝日  2015年9月18日号