8月25日、日経平均株価は一時、800円近く値を下げた。中国の習国家主席はオバマ大統領との首脳会談を9月に控える。安倍首相は9月3日の抗日記念式典に合わせた訪中を見送り、会談はまだ開かれない (c)朝日新聞社 @@写禁
8月25日、日経平均株価は一時、800円近く値を下げた。中国の習国家主席はオバマ大統領との首脳会談を9月に控える。安倍首相は9月3日の抗日記念式典に合わせた訪中を見送り、会談はまだ開かれない (c)朝日新聞社 @@写禁

 日・米・中の同時株安で世界の株式市場が8月下旬、パニックに陥った。「震源地・中国の経済が減速」とメディアは要因を書き立てるが、実は株価を乱高下させるのも習近平国家主席の策略だという。

 実は中国人の間で、この株価下落は、「習近平国家主席からのプレゼント」と言われているという。

 どういう意味か。

 中国の株式市場は昨年11月、中央銀行の中国人民銀行(人民銀)が2年4カ月ぶりに利下げに踏み切った前後から急上昇を始め、今年6月には1年前の約2.5倍に跳ね上がった。利下げで銀行の預金金利が下がる分、株への投資熱が高まった。市場に新規参加した個人投資家は約2千万人ともみられる。

「6月15日は習近平国家主席の誕生日なので、その日から、国民が再び株に投資できるように戦略的に株価を下げたのです」(シグマ・キャピタルのチーフエコノミストの田代秀敏氏)

 戦略的とは、証券会社同士が売買を示し合わせることなどを指すという。

 株価高騰の裏には、習政権が経済政策の運営を百八十度転換したことが背景にあると言うのは、元日銀理事で、メットライフ生命副会長の平野英治氏だ。

「中国の高成長を支えてきたのは、投資主導の政策だった。習政権が進める『新常態政策』は、役人の腐敗につながりかねない無駄な投資を抑制する一方、消費を活発化することで、よりバランスの取れた成長を目指すもの。消費を促す効果がある株価の上昇は、好ましく映ったであろう。中央銀行による利下げも、株価の上昇を後押しした」

 人民銀が保有する外貨準備高(7月末時点)は、3兆6500億ドル。中国株を買い支えるためにドルを売り、前月より425億ドル減少したとはいえ、残高は世界一。

 潤沢な資産をもとに、中国が人為的に株価を操作するのは簡単だという。実際、上海総合株価指数は28日、取引終了前に急騰し、3232.35ポイントまで値を戻した。

 国際政治経済学者で参議院議員の浜田和幸氏の解説。

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