「中国は今、ロシアと手を組んで、軍事的にアメリカに対抗しようとしています。金融の面でも、ドルに代わって人民元を基軸通貨にしたいという野心がある」

 そのため、株価でゆさぶりをかけるのは常套手段だという。

「9月中旬に米中首脳会談がホワイトハウスで開かれます。通貨・人民元の為替制度の自由化などをめぐって協議が行われるそうです。つまり、譲歩を引き出すために、株価暴落をちらつかせている」(浜田氏)

 それを暗示するかのように、8月末、今度は中国が保有する米国債を大量に売っているという報道が流れた。

「今や中国は最大の米国債保有国。いつまで買い続けてくれるかはアメリカにとって死活問題。中国が米国債暴落の引き金を握っていることをあらためて確認させたのでしょう」(田代氏)

 アメリカと軍事的に同盟関係にある日本に対しても牽制している。じつは昨年、中国は日本国債を1年で約5兆円減少させる“大量売り”を実施している。

 中国が日本国債を大量に売却し続ければ日本国債の値下がりを誘い、長期金利は急騰。日本経済は大混乱に陥る最悪のシナリオも考えられる。

 9月3日には北京で「抗日戦争勝利70年」の記念式典が開かれ、プーチン大統領や韓国の朴槿恵大統領らが出席する予定だ。

 アベノミクスが一瞬にして吹き飛ぶ“トリガー”は、習近平が握っている。

(本誌取材班=村田くみ、西岡千史、小泉耕平、永野原梨香)

週刊朝日 2015年9月11日号より抜粋