順天堂大学客員教授(スポーツ行政論)で、東京都が16年五輪を招致したときの準備担当だった鈴木知幸氏は「全員に責任はあるが、最も重いのは所管の文科省」と指摘する。

「とにかく総工費の計算がズサンでした。昨年5月に1625億円と発表したときも、アーチの費用を極端に低く計算するなどして数字を抑え、世論の批判をかわそうとした。専門家からおかしいと指摘されても修正せず、『計画は国際公約』『時間がない』で強行突破しようとした。洗脳された下村大臣の責任も重い」

 元神奈川県知事の松沢成文参院議員も手厳しい。

「大臣は今年はじめ、自身の政治資金問題の対応に追われ、新国立に集中できていなかった。五輪のメイン会場の過去最高額がロンドンの650億円なのに、その何倍もの数字に疑問を持たなかった。本来なら自分から総理に『計画を見直しましょう』と言うのが筋。すでに建築家ザハ・ハディド氏の事務所などに約60億円支払い回収困難なことを考えると、辞任は免れない」

 辞任を求める声は舛添要一東京都知事からも上がった。だが、下村文科相はどこ吹く風。24日の報道番組では「辞める必要はないでしょ」「ゼロベースで見直すとなったので、責任をもってやる」と述べた。大きな混乱を招いた張本人という自覚はないようだ。

 安倍首相は政権へのダメージを考え、下村氏を続投。国会閉会後の10月上旬にも行う内閣改造で、代えるつもりだろうが、それまでは野党から徹底追及されることは必至だ。

 当初の建設計画をゴリ押ししてミソをつけた下村氏。果たして大臣のイスは、強行突破で死守できるか。

(本誌・一原知之、西岡千史、小泉耕平、古田真梨子、森下香枝)

週刊朝日 2015年8月7日号