下流老人 一億総老後崩壊の衝撃Amazonで購入する
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 6月上旬、夜8時。東京都台東区の泪橋の交差点を渡り、路地に入った。簡易宿泊施設が並ぶこの一帯は、ドヤ街と呼ばれる。暗い道を行くと焼き鳥屋があり、何人かの男性が集まっていた。路上に椅子を並べ、話しながらお酒を飲んでいる。

 と、そこにジーンズをはいた中年女性がやってきた。

「こんばんは」

 女性が挨拶すると、「早いな今日」「お袋さん大丈夫か?」と周囲から声が飛んだ。

「下のお世話が大変よ」

 女性は54歳のさっちゃん(通称)。70代後半の母親の介護のため、荒川区から浅草のほうまで自転車で通う。昨年6月から、生活保護を受け始めたという。

「自分のうつ病と親の介護で、仕事ができなくなってね」

 さっちゃんは20代から30代にかけて病院の受付をしていた。貯金も以前は千万円単位あったが、それをすべてなくしたという。

「男性に貢いでしまって」

 借金ができて、それを返すために水商売などで必死に働いたが、ストレスからうつになった。自分を責めて落ち込むなか、父ががんで他界、母も脊髄の病に……。

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