会場には医師、ヘルパーなど介護職の人もたくさん駆けつけた(撮影/工藤隆太郎)
会場には医師、ヘルパーなど介護職の人もたくさん駆けつけた(撮影/工藤隆太郎)

 5月24日、漫画『ヘルプマン!! 介護蘇生編』出版記念のトークイベントが開かれた。イベントでは、作者のくさか里樹さん(56)のほか、現役で介護業界に関わる人々も登壇し、会場に集まった人たちと、現場の問題について話し合った。

 ITコンサルを立ち上げた竹下康平さん(39)と、弁護士の外岡潤さん(35)のふたりも、“ヘルプマン”の“ヘルプマン”だ。

 竹下さんは、介護・福祉・医療業界に役立つITを届け、社会貢献したいと10年にサポートサービス「ほむさぽ」を立ち上げた。外岡さんは、介護事業者と家族間のトラブル解決に特化した、日本初の介護・福祉系法律事務所「おかげさま」を09年に開設。

「ITや情報を共有する技術はコストが高いんですが、必要のない機械を導入して使いこなせないでいる。介護以外の負担を減らして、仕事をしやすく改善したい」(竹下さん)

 介護職の人が仕事を続けられるように、金銭的、肉体的に「負担がかからない」といった「情報」をいかに伝えるのかがカギ。それが、ひいては介護の質の向上につながるという。

 外岡さんはITを利用した自らの介護の工夫を語った。「私の87歳になる祖母は、デイサービスとショートステイなどを利用しています。自宅で過ごすとき、一日中見守るわけにはいかない。そんなとき、竹下さんの会社に相談したら、いい見守り機器を紹介してもらえました」

 それはベッドの脇に小型のカメラを設置して、タブレット端末で様子を確認できるというもの。機器と設置代含めて1万円程度だったという。自宅で利用中のネット回線などを活用するため、月々のコストはカメラを稼働させる電気代のみ。

「離れたところで暮らしていても安否を確認できるので、こういった見守りの機器がもっと世間に認知されると、介護が楽になる人が増えるのでは」と、外岡さんは期待する。

「家族は24時間365日、命の最終責任者として、責任を負っています。介護保険のサービスだけでは、間に合わない。竹下さんの会社が手がける見守り機器のように、安くて質のいいサービスはもっとあるはず」(くさかさん)

 高齢者が増加の一途をたどるとともに直面する問題も、より複雑化している。

 家族が悩みに直面していても、介護のよろず相談所「地域包括支援センター」も管轄外。介護職員も、相談されてもどうすることもできない。まさに今、八方塞がりなのが、現在、小誌で連載中の「高齢ドライバー」問題だ。「小学生の列に突っ込んだ」「高速道路を逆走した」と、認知症の人が、車で徘徊して事故を引き起こすケースが報道されている。

「じつは私も過去に3回、一般道を逆走したことがあります(笑)。おかしいと思っても、どこに相談したらいいのかわからない。でも、今は予備軍も含めて高齢者の4人に1人が認知症。道路交通法が改正されようとしていますが、認知症の人の免許を取り上げて、部屋に閉じ込めてしまっていいのか。くさいものにフタ、で済ませないためにも、先に漫画で描こうと思ったのです」(同)

 これから、主人公の百太郎がどのように「認知症ドライバー」を抱える家族を救うのか。今後の展開に、こうご期待!

週刊朝日 2015年6月12日号より抜粋