グローバル人材、どう育成する?(イメージ写真)
グローバル人材、どう育成する?(イメージ写真)

 私立大学の約半数が定員割れという“大学戦国時代”。生き残りをかけて各大学が知恵を絞る中、注目されているのが、昨秋決まった「スーパーグローバル大学」だ。現在は計37校が、「トップ型」と「グローバル化牽引型」にわかれて認定された。安倍政権の成長戦略の柱の一つとされ、国際競争力の原動力となる「グローバル人材の育成」を託された“勝ち組”だが、そもそも「グローバル力」とは?

 各大学がそれぞれに知恵を絞って増強を図る“スーパーグローバル力”だが、通底しているものは何だろうか。

「異質なものを受容し、相手にも受容してもらえる力、交渉力。突き詰めれば、高度なコミュニケーション能力ではないでしょうか」

 みずほ情報総研コンサルタントの田中文隆さんは、こう分析する。

 メーカーや商社など、一部の企業が海外拠点を持っていた時代は、限られた人間だけに必要とされた能力だったが、今や消費市場そのものが海外にある時代だ。

「産業界はそうしたスキルを持つ人材をより多く欲し、少子化で学生の獲得にしのぎを削る大学は生き残りをかけ、そのニーズに応えようとするのでしょう」

 と分析する。それは就職率にも表れている。

「グローバル化牽引型」の象徴的存在ともいえる立命館アジア太平洋大学の昨年度の就職内定率は、全体で94.4%、国内学生では97.6%に達した。全国平均より高く、しかも早く決まるのが特長で、同大への企業の人気の高さがうかがえる。

 また、田中さんが今回のSGUで注目したのが、地方の大学が多く採択された点だという。

「トップ型に代表される研究分野での国際競争力を高めるためのグローバル化はもちろんですが、こうしたグローバル人材を育成する教育が、地方大学にも求められるようになった表れでしょう」(田中さん)

 たとえば福島県の会津大学。1993年創立の同大は、日本初のコンピューター専門の大学だ。創立当初から起業家育成を積極的に進め、大学発の企業は25社を数え、学生数あたりの数としては日本一という。

 95年に設立したソフトウェア開発などを手掛ける「シンク」は、同大の卒業生が起業したベンチャーの第1号だ。

「会津は地域全体で大学を応援してもらえる。役所の仕事もベンチャーにどんどん発注してくれる。地方では画期的なことです」

 卒業生の上野文彦社長は地域の先見性を評価する。

 同大は今後、留学生の数を増やすと同時に、卒業生の地域定着を図るという。同大産学イノベーションセンターの石橋史朗教授は、

「地域に根差したグローバル大学が私たちに求められていると思っています」

 と、意気込みを語る。

週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋