※イメージ写真
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 常識はずれのワガママで世界を驚かせた“ナッツ姫”に厳罰が下された。

 韓国・ソウル西部地裁は2月12日、大韓航空前副社長の趙顕娥(チョヒョナ)被告(40)に航空保安法違反などの罪で懲役1年(求刑懲役3年)の実刑判決を言い渡した。趙被告は13日に控訴した。

“ナッツ・リターン”として有名になったこの事件は昨年12月、大韓航空機の客室乗務員がナッツを袋のまま出したことに趙被告が激高し、搭乗口を離れていた飛行機を引き返させたことが発端。その後、会社ぐるみの隠ぺい工作も発覚した。裁判長は「きわめて危険で非常識」と趙被告を叱責。趙被告は、口に手を当て号泣したという。

 それにしても、事故も起きていないのに実刑判決とは、いささか厳しくないか。刑法に詳しい板倉宏・日大名誉教授はこう語る。

「懲役1年という判決にはそれほど違和感はありませんが、日本だったら4年程度の執行猶予がついていたと思います。韓国では法の運用が世論に左右されやすいようですね」

 趙被告は韓国の財閥「韓進グループ」会長の長女。格差の拡大が深刻な韓国では、努力もせず大企業幹部に収まる財閥2世、3世への反感が高まっており、趙被告への世論の反応も厳しいという。韓国在住ライターの原美和子氏がこう語る。

「判決へのネットの反応を見ても『韓国の恥』『海外にも驚きを与えたのだから当然の報い』と、擁護の声はほぼ皆無。趙被告を叱責した裁判長は称賛されています。趙被告は13年にハワイで出産した双子の母ですが、それも米国籍を取得させて兵役を逃れるためではないかと批判され、同情にはつながらなかった」

 韓国は経済も不調で、朴槿恵大統領の支持率は20%台にまで低下。韓国事情に詳しいジャーナリストの菅野朋子氏は、判決の背景をこう推測する。

「国民は事件に憤っており、判決が甘ければさらなる世論の反発は必至でした。ただ、韓国の歴代政府が財閥幹部などの刑罰をクリスマス恩赦のような形で赦免してきたように、韓国では財閥の威光を無視できない雰囲気がある。今回も控訴審で執行猶予がつく可能性は考えられるでしょう」

 ナッツが格差解消のきっかけになるのなら、騒いだかいもあるのだろうが。

(本誌取材班=上田耕司、小泉耕平、西岡千史、福田雄一、牧野めぐみ/今西憲之)

週刊朝日 2015年2月27日号