中学入試で難関の第1志望校に行けそうになくても、ガッカリすることはない。中学受験時の偏差値はそれほど高くないのに進学実績をあげている「お得な中高一貫校」がたくさんあるからだ。

 日能研関西・進学情報室の森永直樹室長が注目するのは、金蘭千里(大阪)だ。卒業生が165人と少ないのに、東大に2人、京大に4人、国公立大医学部に7人が現役合格。全ての国公立大現役合格率は43.6%で、偏差値50以下の学校では開明(大阪)とともにずばぬけている。

「1965年の創立以来、1学級約30人と少人数なので、目が行き届き、個別対応ができます。中3から英語と数学が習熟度別の授業になりますが、特別なコースはありません」と話すのは、大中章(おおなかあきら)教頭だ。

 同校の教育には大きな特徴がある。中間・期末テストは実施せず、月曜から金曜まで毎朝20分のテストを行う。5教科10科目を1日1科目ずつ実施し、2週間でワンサイクルになる。

「中間・期末のテストだとだいたい6週間ごとですが、毎朝のテストだと3分の1のスパンできめ細かくチェックできる。必要に応じて追試や補習を行うため、生徒は早めに自分の弱点を克服できます」(大中教頭)

 最近は医学部志望者が増え、毎年20~30人ほどいるが、国語の教員が小論文と面接を専門に指導する。一人あたり10回ぐらい小論文の添削と面接を行うというから、徹底している。

 このほか、全学年で毎年実施する宿泊を伴うキャンプや自然体験研修にも力を入れている。高1の夏にイギリスの名門パブリックスクールの寮で約3週間過ごす「海外研修」は希望者対象だが、毎年、約3分の2の生徒が参加するという。

 ユニークなのが、男子はサッカー、女子はバレーボールを校技として、週3時間の体育の授業のうち2時間をあてていること。6年間、ひとつのスポーツを全員が続け、学期末には校内大会を実施する。これによって、生徒たちが仲良くなり、まとまっていくという。

 大学の系列校なのに、東大1人、京大5人、国公立大医学部3人の現役合格者を出したのが甲南女子(兵庫)だ。系列の甲南女子大への14年の進学者数は過去最少の25人で、全ての国公立大現役合格率も系列校としては19.4%と高い。

「これまでも、少人数の国公立大志望者のために直前の講習を実施していました。だんだんと国公立大志望者が増えてきたため、7年前に国公立大受験のためのカリキュラムを組んだコースを1クラス新設しました。現在はこのコースが2クラス、スタンダードコースが3クラスという編成です」(後田尚宏[のちだたかひろ]副教頭)

 昨春、東大に現役合格した生徒は、この新コースの1期生だ。京大の合格者はスタンダードコースからも出ているという。

 同校は関西では「英語に強い学校」として定評があり、授業時間が多いなど英語教育に力を入れている。希望者には2週間の短期から1年間の長期までさまざまな留学プログラムを用意しているほか、中1のときには全員が近隣の大学の留学生と1泊して共同学習する「イングリッシュ・ビレッジ」を実施している。

「自分で考え、表現する力が身につくように、中2は週1時間の『平和の時間』、高1は週2時間の『探究の時間』を設け、自分で調べて発表します。中3では、全員が保育園や幼稚園で保育実習を行います。準備やリポート作成を通じて、客観的に自分を見ることにもつながっているようです」(後田副教頭)

 中高一貫校は、それぞれに校風や学習カリキュラム、教育方針などが異なる。よく調べて学校選びをしてほしい。

(庄村敦子)

週刊朝日 2015年2月6日号より抜粋