3人に1人が悩むとも言われるポピュラーな病気「痔」。特に痔核(いぼ痔)は痔のなかでもっとも患者数が多く、男女とも、痔の患者の約半数を占める。トイレでのいきみや便秘、下痢などが繰り返されることで起こる。排便時の出血、痛み、いぼ状の痔核が肛門から外へ出てくるなどの症状が特徴だ。

 痔核は、進行度に合わせてさまざまな治療法がある。しかしそれだけでは痔核は治らない。岩垂純一診療所(東京)所長の岩垂純一医師は次のように話す。

「痔核の原因になった排便習慣や生活習慣を改めない限り、悪化・再発してしまいます。『痔の予防・改善10カ条』を心がけることが第一歩になるでしょう」

 中心になるのは排便習慣の改善だ。まず肛門周辺の支持組織に負担をかけないよう、トイレで強くいきまないこと、排便時間は3分以内にして長居しないことがポイントになる。便意を感じていないのに決まった時間にトイレに座り、長い時間過ごす習慣は避けたほうがよい。便を出し切れていない気がしても、一度トイレから出て、再び便意を感じるまで待つことがすすめられる。

 便秘や下痢を防ぐことも大切だ。便秘でいきむことは肛門に負担をかけ、硬い便が肛門を傷つける。下痢で排便の回数が多くなることも、やはり肛門に負担をかける。ふだんから食物繊維を積極的にとり、ヨーグルトや発酵食品などで腸内細菌をととのえて自然な排便をうながすのもプラスになる。また、腸の動きを活発にするために、朝食はきちんととり、適度な運動をすることも有効だ。

 長時間、座った姿勢を続けることは肛門周辺の血流を悪くする要因になる。適度に休憩を入れ、からだを動かすようにしたい。肛門やおなかをあたためて血行をよくすることも必要だ。シャワーよりも入浴がいい。冷え症の人は腰をカイロであたためるといいだろう。

◇痔の予防・改善10カ条
1.おしりは清潔に
肛門周辺の清潔を保たないと細菌が繁殖し、かゆみや炎症の原因になる。排便のあとはきれいにし、洗浄便座を使ったあとは十分な乾燥を。

2.便秘は禁物
便秘で腸内にたまった便は硬くなり、排便時に肛門を傷つけることになる。便秘しないようにしよう。

3.下痢をしない
下痢は肛門を刺激し、おしりも不潔になりやすいので要注意。

4.トイレで強く長くいきまない
排便時に強く長くいきむと、肛門をうっ血させ、負担がかかってしまう。

5.長時間トイレにこもらない
トイレは長くても3分以内に。完全に出し切るのを待つと長時間こもることになる。

6.腰やおしりを冷やさない
冷えは血行不良につながり、下痢の原因にも。入浴して十分あたためよう。

7.食物繊維をしっかりとる
食物繊維は腸内で水分を吸収し、便を軟らかくする。スムーズな排便のためにも食物繊維をとろう。

8.朝食をきちんととろう
朝食は胃腸の活動をうながし、自然な便意を起こさせる。

9.適度な運動を心がけよう
適度な運動は腸を動かし、排便をスムーズにする。

10.睡眠はきちんととる
十分な睡眠で自律神経のバランスをととのえ、脳と腸の関係をよくしよう。

週刊朝日  2015年1月16日号より抜粋