文筆家の北原みのり氏は、衆院解散・総選挙を突如決めた安倍首相やある政党の政策についてこう疑問を呈する。

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 毎月のように海外旅行に行く安倍首相が羨ましい今日この頃、私ももっと海外旅行したいなぁ~と思っていたら、突然の解散・総選挙?「私たちが間違っているのか。正しいのか」と安倍首相は国民の信を問うと言うけれど、正直、とっても負担です。だって700億円もかかるんでしょ、選挙に。そんなお金を、くそ忙しい師走に使って、僕の正しさを国民に問うだなんて、めんどうくさい男だわ。もちろん選挙にはきちんと行くし、過半数取ったくらいで「僕、承認されたんだからね!」と言わせないように、文句を言っていきたいと思います。

 それにしても選挙の時には耳に優しいことを語りたがる政治世界で、「次世代の党」の政策の「強気」と「極端」には、目を見張るものがあります。例えば、「生活保護を日本人に限定し、現物支給化」と言い切っちゃってる。現物支給とは、例えばパチンコ代などに使わないよう、食品の購入にしか使えないサービス利用券を発行したりするという。外国人には生活保護を与えないとも明言。なんてまぁ政治家とは思えない非寛容さ! あからさまな外国人差別主義者!

 そして「男女共同参画施策をやめます」とも明言。「地方自治体が、あたかも女性も社会で働くべきだという風潮を煽るような講演会などの啓発活動を展開してきたため、子育てや家事を支える女性を軽視する傾向が強くなっています」とのこと。……そうなんですか? もともとこの国の男たちは、「誰がお前を食わしてると思ってるんだ?」とか「悔しかったら、お前も稼げ!」等と「専業主婦」たちを軽視し侮蔑してきたんじゃないすか? 金を稼げない者、弱い者、声をあげられない者を足蹴にしてきたのが、この国の政治だったんじゃないすか?

 安倍首相がよくわかんない「日本を取り戻す!」と拳を上げているのだとしたら、次世代の党は「家父長制を取り戻す!」と男根を振りかざしているように見えます。どちらにしても、現実があまりにも見えていないドリーマー。家父長制ドリーマーは、この際、ゆっくり永遠に眠っていただきたいです。

週刊朝日  2014年12月12日号

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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