次はオレだ! (c)朝日新聞社 @@写禁
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 しばらくは安倍一強時代が続く──そう思われていた安倍政権にかげりが生じたことを受け、自民党内では、「ポスト安倍」を狙う動きがにわかに出てきた。

 活気があるのは、谷垣禎一幹事長(69)のグループ「有隣会(ゆうりんかい)」だ。所属する衆院議員の鼻息は荒い。

「野党時代とはいえ、総裁を3年間務めただけあって、谷垣さんの安定度は抜群です。幹事長になった9月以降、新人議員との懇談も積極的にしているので、日に日に支持者が増えている。地方議員からは『さらに不祥事が起きた時は、次は谷垣さんにお願いしたい』との声が上がり始めました。公明党の山口那津男代表とは蜜月だし、期待は高まっていますよ」

 来年秋の総裁選で勝利するには、幹事長としての実績が重要になってくる。前出の衆院議員は「来年1月、谷垣さんに中国を訪問してもらい、習近平国家主席との会談を実現させる」と息巻く。

「靖国参拝などで安倍首相がギクシャクさせた日中関係を、親中派の谷垣さんが回復させるのです。目に見える成果だし、日本の経済界も高く評価するはずです。来春には統一地方選がありますが、これから各地を回り、地方議員の支持者も増やしていきます」

 さすがは権力闘争が盛んな自民党。政権のピンチはチャンスのようだ。

 一時期、ポスト安倍の最有力とみられ、その後失速した石破茂地方創生担当相(57)。支持するグループ(無派閥連絡会)にも、徐々に動きが出てきた。所属する中堅議員が言う。

「石破さんが無役にならず入閣したことで、グループ内に一時はしらけたムードが漂ったのは事実です。でも今回のダブル辞任で、再び結束しようという声が出始めた。石破さんの後見人の笹川堯(たかし)元総務会長も『何が起こるかわからんし、総理を諦めちゃいかん』と尻をたたいているようです。再び盛り上がっていくでしょう」

 ダブル辞任の2日後の22日、石破大臣は「地方創生」の実現に向けた政策立案の基準を発表し、久々にマスコミの注目を集めた。総裁選に向け、本人もペースアップしていくのか。

 谷垣、石破両氏に加え、岸田派(宏池会)を率いる岸田文雄外相(57)も、総裁レースに参戦する可能性が指摘されている。

 宏池会は池田勇人以来、大平正芳・鈴木善幸・宮沢喜一と4人の総理が輩出したが、以降20年以上も総理が出ていない。岸田派の実質オーナーの古賀誠元幹事長も、「目の黒いうちに宏池会政権を誕生させる」と公言しているだけに、強烈な追い上げが予想される。

 内閣支持率も下がり、逆風が強まるなか、安倍首相が粘りを見せるのか、はたまた次の号砲が鳴るのか。自民党伝統の党内抗争から、目が離せない。

週刊朝日  2014年11月7日号