和光堂 納裕子取締役・開発本部長(55)おさめ・ゆうこ/1959年生まれ。80年、女子栄養短期大学食物栄養学科卒業。同年、和光堂入社。生産部、品質保証部などを経て、2014年3月に取締役に就任(撮影/写真部・山本友来)
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和光堂 納裕子取締役・開発本部長(55)
おさめ・ゆうこ/1959年生まれ。80年、女子栄養短期大学食物栄養学科卒業。同年、和光堂入社。生産部、品質保証部などを経て、2014年3月に取締役に就任(撮影/写真部・山本友来)
週刊朝日・長友佐波子編集長(撮影/写真部・山本友来)
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週刊朝日・長友佐波子編集長(撮影/写真部・山本友来)
納さん(右)と長友編集長(撮影/写真部・山本友来)
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納さん(右)と長友編集長(撮影/写真部・山本友来)

『週刊朝日』の長友佐波子編集長が企業で輝く女性役員にインタビューする「フロントランナー女子会」。今回は和光堂の納裕子(おさめゆうこ)取締役・開発本部長です。

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長友:「牛肉の赤ワイン煮」とか「海鮮しんじょの甘酢あんかけ」とか、メニューも豊富でおいしそうですね。高齢者は舌が肥えている方も多いから、注文が厳しかったりしません?

納:おっしゃるとおり、豊かな食生活を体験したあとに選んでいただくものなので、これからどんどんオーダーメード的に多品種になっていくと思いますね。

長友:どれくらい高齢者向けの商品があるんですか?

納:やわらかいごはんや雑炊、お肉、お魚料理などが楽しめる「食事は楽し」シリーズをメーンに、お茶やお味噌汁などに混ぜてとろみをつける「とろみエール」、不足しがちなたんぱく質を取るためのプロテインなど、食品だけで55品目あります。

長友:とろみって、嚥下しにくくなった人が、むせて気管に入る危険を防ぐためのものですよね。

納:よくご存じですね。あまり知られてなくて、病院などで紹介されて初めて使い始める方も多いんですが、潜在的に必要な方はとても多い商品だと思います。

長友:介護食ってどれくらいの市場なんですか?

納:病院や介護施設なども入れて1千億円超と言われています。一般の在宅向け商品は130億円超と言われているようです。

長友:すごい! しかも高齢者の人口は増加するから、さらに拡大しますね。

納:20年には1300億円に拡大すると予測されています。でも介護食を作っているメーカーは多いし、今は加工技術も様々に進んでいるから、その中で選んでいただくのは大変ですね。

長友:御社の強みとしては、長年ベビーフードで培われた技術があること?

納:そうですね。ずっとベビーフードを作り続けているので、品質や具材をやわらかくする独自の製法には自信がありますし、安心してご利用いただいていると思います。それとお口まわりのケア用品もシリーズで展開しているところが特長です。私たちは「“食べる”をずっと楽しく」を根底に商品提供をしてますが、食べるためには口腔ケアも重要なんです。

長友:口腔ケアって若い時と変わってくるんですか?

納:乾燥しやすくなるから、保湿が大事になるんですよ。カサカサのまま歯磨きをしたら痛いし傷つけてしまいますので、その前に口内に潤いを与えないと。「おしぼりウエッティー」って私たちの商品なんですけど、その技術を使って「口腔ケアウエッティー」という商品があるんですね。要介護の方に、家族やヘルパーさんなどがそのウエッティーを指に巻いてお口の中をキレイにして、ジェル状の保湿商品をスポンジブラシでお口の中に塗って、潤いを与えるのです。

長友:年を取るとお肌は保湿保湿と言われますけど、口内も同じなんですね。

納:そうなんです。そう言われれば乾燥しやすくありません? シニアは50代からとも言いますし。やっぱり皆さん、「私にはまだ必要ないわ」と思われがちなんですけど、豊かな食生活を長く楽しもうと思うと大事なことなんですね。

週刊朝日  2014年10月10日号より抜粋