現実に近い仮想空間を人工的に作り出すVR(バーチャルリアリティー)技術。9月中旬に開催された「東京ゲームショウ2014」ではソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCE)が開発を進める、プレイステーション4向けの「Project Mor–pheus」(以下、モーフィアス)、Oculus VR社が開発した「Oculus Rift」(以下、オキュラス)をはじめとするヘッドマウントディスプレーを使ったVR系機器が大きな注目を集めた。元ライブドア社長の堀江貴文氏が「VRはネットの次のインフラになる」と予言するその実力とは?

 実際にオキュラス用のコンテンツを展示するイベント、「オキュフェス」は日本各地で開催され、企業や個人が全国から集まる。

 例えば、テレビ朝日メディアプレックスが開発した「ジュラシックアドベンチャー」は、CGで作られた恐竜たちの世界が再現されていて、恐竜時代にタイムスリップした気分を味わえる。オキュフェス代表の高橋建滋さんが東京工科大学と共同開発している「Oculus講義」は、講義をパノラマ動画で撮影し、追体験することで学習効果を高めるというコンテンツだ。

「オキュフェスをきっかけに、より多くの人にVRの世界を体験してもらいたい。ヘッドマウントディスプレーを利用したVRが紙やラジオ、テレビの次に来る新しい文化になると信じている」(高橋さん)

 そして元ライブドア社長の堀江貴文さんは、「VRはネットの次のインフラになる」と予言する。

「VRを体験すれば、その世界観の凄さに誰もが驚く。用途はゲームだけでなく、旅行や過去の思い出に浸ることもできる。仮想空間なら宇宙でもニューヨークでも行き放題。動画を撮っておけば、死別したおばあちゃんにだって会える」

 実現すればまるで夢のような世界だが、課題もある。今はまだVR体験者が圧倒的に少なく、国内での認知度が低いのだ。だが、それも近い将来に解決すると堀江さんは予測する。

「東京ゲームショウなどで発表されたVR系機器が話題になり、オキュフェスのようなイベントが定期的に大きな会場で開催されるようになれば、ディベロッパーが集まるようになってバイヤーがコンテンツを買いにくる世界が構築される。そうなればモーフィアスやオキュラスのような機器の軽量化や小型化、低価格化が進み、一気に普及してインフラ化する」(堀江さん)

 VR技術をすでに取り入れている企業もある。

 長崎のハウステンボスでは、施設内にあるゲームミュージアムで「オキュラス」を使って、仮想世界で乗馬レースに参加できる「ハシラス」が試遊できるという。

 そしてVR導入の起爆剤の一つとして期待されているのが、20年に開催される東京五輪だ。

「VR系機器だけでなく、パノラマ撮影ができるカメラも軽量化、小型化が進んでいる。撮影機材が進化すれば、例えば、サッカー競技場のスタンドにカメラを設置しておけば、家にいながらも会場で観戦しているようなコンテンツも作れる。今、テレビは平面が当たり前ですが、東京五輪ではVRでの観戦が当たり前になっているでしょう」(前出の近藤さん)

 モーフィアスやオキュラス以外にも、VR関連機器は今秋から15年にかけて続々と販売、開発が予定されている。サムスン電子はアンドロイド端末の「GALAXY Note 4」をディスプレーとして利用するVRヘッドマウントディスプレー「Gear VR」を9月に発表した。VR世界で自由に歩くことができるルームランナー型VRデバイス「Omni」(Virtuix社)は年内の発売が予定されている。

 機器の小型化や低価格化など課題を抱えつつも、VR世界の体験者が続々と増えるのは間違いない。「15年はVR元年」と呼ばれるかもしれない。

(本誌・竹内良介)

週刊朝日 2014年10月10日号より抜粋