岸朝子さん(撮影/写真部・大嶋千尋)
岸朝子さん(撮影/写真部・大嶋千尋)

 素敵に年を重ねている料理記者の岸朝子さん(90)。岸さん流の「老い」をこう語る。

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 私の恩師で、女子栄養学園(現・女子栄養大学)を創立した香川綾先生の言葉に「食は生命、生命は食にあり」があるのですが、それに尽きますね。私も「おいしく食べて健康長寿」をモットーにしてきました。

 私が提言しているのは、主食以外に魚[うお](肉)1、豆1、野菜と果物を合わせて5、それに牛乳1本と卵1コの割合で一日の食事をとること。豆はお豆腐とか納豆でいいんですよ。食事は愉しむものです。でも、食べたいものだけを食べていてはだめ。栄養バランスと量を考えることも必要です。ストイックにやる必要はありません。今日食べすぎたら、明日は軽めに、野菜が少なければ夜多めに。そんな感じでいいんです。

 私自身は、好き嫌いなく、何でもいただきます。朝はパンと、グレープフルーツとリンゴをミキサーにかけたジュース。リンゴは皮ごとがおすすめ。皮に栄養があるんです。昼はおそばなど適当に。夜はお肉でもお魚でも、いただきます。どちらかというと肉食かしら。最近は食べる量は減りましたけど……。

 32歳で料理記者になりましたが、今でも仕事は続けています。月に1回は連載のために、都内のお店の食べ歩きをするんですよ。和食からステーキハウスまで、おいしいお店を探して。多いときは月に10本もの取材を受けることもあります。でも、そのための体力作りなどは一切していません。そんな余計なことはしないの(笑)。

 無理をせず、好きなことだけを今はしています。たばこも吸っていますし、夜は日本酒をいただきます。1合から、多いときは2合ほど。「花子とアン」を毎朝見ることも楽しみ。

 香川綾先生も98歳と長生きされ、最後までお元気でした。私も綾先生を目指しています。それにはやっぱり「食は生命」なんですね。

週刊朝日  2014年9月26日号より抜粋