ソフトなイメージで原発反対派を懐柔? (c)朝日新聞社 @@写禁
ソフトなイメージで原発反対派を懐柔? (c)朝日新聞社 @@写禁

 過去最多に並ぶ女性5人を入閣させて支持率のアップを図った安倍晋三政権の内閣改造人事。中でも今後、焦点になる原発再稼働をめぐって注目されるのが「初の女性宰相候補」との呼び声も高い小渕優子経済産業相(40)だ。

 9月3日の就任会見では、「安全性が確認された原発の再稼働を進める」という政府方針通りの見解を述べる一方、「私自身も子供を育てていますが、女性から不安の声をうかがっている」とも。子育てにはげむ2児の母ならではの目線で独自の原子力政策を進めるかに思われた。

 ところが9日に行われた大臣会見で、こうした期待は見事に裏切られた。昨年7月に施行された新規制基準について、テロ対策が不十分であることや、メルトダウンした際に核燃料を受け止める「コアキャッチャー」が義務付けられていないなどの不備があると記者から指摘されると、

「様々なご意見はあると思いますが、規制委員会における基準というのは、『世界においても一番厳しい』と言われる規制だと私は承知をしております」

 と、「原子力ムラ」の公式見解通りの答弁に終始したのである。

 原子力規制委員会の新規制基準については、東京電力柏崎刈羽原発を抱える新潟県の泉田裕彦知事が、「日本の規制委員会は国際水準以下」と、かねてから批判。「卒原発」を掲げる滋賀県の嘉田由紀子前知事も、「世界一厳しいとはいえない。プラントの安全審査中心で、原発事故の際の避難計画も再稼働の必要条件になっていない」と、不備を指摘していた。そのことを聞くと、「追加質問はご遠慮ください」と打ち切られた。

「ソフトな印象の小渕氏は、原発再稼働実現のためのクッション役でしょう。これまで原発政策を研究した形跡もなく、会見での発言も経産省の振り付け通り。世論の反発でボロボロになっても安倍首相に痛手はなく、捨て駒にされるのではないか」(環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長)

 そんな中、再稼働へ向けた動きは着々と進んでいる。原子力規制委員会は10日、九州電力川内原発について新規制基準に適合したとする「審査書」(事実上の合格証)を正式決定。年明けにも再稼働が行われるとみられている。

 同日の会見で、田中俊一委員長はこう強調した。

「再稼働は規制委の考慮対象外。再稼働のリスクは政府が負うことは国会でも申し上げている」

 政府も規制委も、お互いに責任を押し付け合うばかり。「初の女性宰相候補」が、こんな理不尽を許すのか。

(本誌・上田耕司、小泉耕平、福田雄一、牧野めぐみ、山内リカ/今西憲之、黒田 朔、三杉 武、横田 一)

週刊朝日 2014年9月26日号