古市憲寿さん(撮影/写真部・植田真紗美)
古市憲寿さん(撮影/写真部・植田真紗美)
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 社会学者の古市憲寿さんは、語り口のスマートな29歳の若き論客。作家・林真理子さんとの対談で意外なことを口にした。

*  *  *

林:古市さん、「政治に興味ない」ってはっきり言ってますよね。

古市:実際、社会を変えてきたのは政治家じゃなくて、企業家やクリエーター、セレブリティーとかだったと思うんです。みんな政治にすごく期待するけど、政治にできることって、いまはどんどん少なくなってると思うんです。だからそこに関心を持たなくてもいいんじゃないかと。

林:ただ、法律をつくっていくのは政治家ですからね。あの人たちも、のほほんとしてるようで、やるときはけっこうやると思いますよ。

古市:もちろん、政治にしかできないこともたくさんありますが、自分が影響力を持とうと思ったときに、政治家としてトップに上り詰めるのはすごく時間がかかるじゃないですか。それなら、身の回りの100人とか千人とかに対して影響力を持つ人が増えたほうが、社会はよくなっていくと思うんですよ。

林:なるほど。いまの若い人は大変で、大学間の格差もどんどん広がっているし、同じ大学の中にも「スクールカースト」ができているわけですよね。

古市:大学時代はフラットなんですけど、どこの企業に就職するかによってその子の価値が決まっちゃうんです。大企業に勤める人がよくて、名前も知らない企業に勤める人はあまり評価されない。でも人気企業ランキングって、しょせん大学生の目から見たランキングじゃないですか。実際は大学生の目にとまらないいい企業ってたくさんあるはずなのに、学生は知らないし、見つけ方もわからない。いろいろなところでミスマッチが起きてると思うんです。

林:大学の入り方にも、推薦、AO、帰国生枠と、いろいろありますよね。いまは私立の入学者は半分がちゃんと受験してないんじゃないですか。「こんなのあり?」という方法で入学してブランド名を手に入れて、そこでまた格差ができるって、いまの学生は可哀想だなと思いますよ。

古市:でも、勉強しかできない人以外もいい大学に入れるというのは、ある種健全になったと思いますね。「コミュニケーション能力のないガリ勉」って、仕事でも使えないことが多いじゃないですか。社会一般の基準に大学側が近づいたという点で、評価できると思います。というか、僕自身、慶応はAO入試で入学しているので。

林:あ、失礼しました(笑)。

古市:東大の大学院も試験はありますが、面接や論文の比重が大きいんです。だから僕、受験勉強ってしたことないんです。

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