衝撃の号泣会見で渦中の人となった野々村竜太郎前兵庫県議(47)。一連の騒動を新聞やテレビが取り上げ、インターネットが“増幅装置”となって、いまやお祭り騒ぎの様相になっている。

 賛否はネット上だけでなく、話題性にあやかろうとする便乗商法にまで広がる。

 政治家をモチーフにしたユニークなお菓子の製造販売で知られる「大藤」(東京都荒川区)は「号泣饅頭」の構想を練りながら断念。同社の大久保俊男社長が言う。

「パッケージは野々村氏の似顔絵で、饅頭に押す『59』(号泣)の焼き印を頼む段階までいったのですが、『兵庫県民の中には恥じ入る声もあり、それで商売をするのはどうか』と社内で反対の声があがり、発売に至りませんでした」

 一方、時事ネタTシャツを専門に取り扱うアパレルメーカー「ジジ」(同武蔵野市)は会見直後の今月4日に「ヒステリック野々村Tシャツ」(税込み3132円)を発売。デザイナーの菊竹進氏によると、ぜひ商品化をとのリクエストが寄せられたという。

「2週間で約250枚売れ、今年の売り上げナンバー1の小保方Tシャツに迫る勢い。ただ、西宮市民の方から励ましの電話がある一方、『品のないひどい商品だ』と苦情も届いています」

 
 こうした過熱ムードのなかで、ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「野々村氏だけでなく、叩いている側も一種のヒステリー状態に陥っているのではないか」と懸念する。

「皆が叩いているから、流れにのって面白がっている。まさに憂さ晴らしです。自分たちは安全な場所にいながら、裁きが下されるまで好き放題に叩く風潮はいかがなものか」

 確かに、野々村フィーバーの火付け役である当の本人は11日付で辞職。県議会は虚偽公文書作成・同行使容疑で兵庫県警に刑事告発。詐欺容疑での立件も視野に実態解明が進められている。

 今年に入ってからの“偽ベートーベン”こと佐村河内守氏、STAP細胞で注目を浴びた小保方晴子氏などの騒動も今回同様、“お祭り”に発展した。それを踏まえ、精神科医の香山リカ氏は今後を推測する。

「遠慮なく叩ける人がいたら、一斉に集中砲火で攻撃する傾向が強まっている。それは決して社会正義ではない。消費し尽くしたら、また次のターゲットへ雪崩のように向かうはずです」

週刊朝日  2014年8月1日号より抜粋