刑事ドラマ対決 評論家が軍配を上げたのは『MOZU』? それとも『BORDER』? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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刑事ドラマ対決 評論家が軍配を上げたのは『MOZU』? それとも『BORDER』?

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週刊朝日#ドラマ

 評論家の成馬零一が、今クールの木曜夜9時台に放送している2つの刑事ドラマについて、こう批評する。

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 同じ時間帯に観たいドラマが重なるのは、できれば避けたいもの。今、もっともファンの頭を悩ませているのが、木曜夜9時台に放送中の『MOZU Season1~百舌(モズ)の叫ぶ夜~』(TBS系)と『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』(テレビ朝日系)の2本の刑事モノでしょう。どちらをリアルタイムで、どちらを録画で観るか、毎週頭を痛めています。

『MOZU』はWOWOWとTBSの共同制作。物語は、東京・銀座で起きた謎の爆弾事件で妻を失った公安の刑事・倉木尚武(西島秀俊)が事件の真相を追ううちに、公安組織に妨害を受けたり、謎の暗殺組織に命を狙われたり、「百舌」と呼ばれる謎の殺し屋が登場したりと、謎が謎を呼ぶ展開です。映画『海猿』シリーズで知られる羽住英一郎が監督を務めることもあり、アクションに力を注いだ、とても映画的なドラマと言えます。ただ役者の演技が過剰で、拷問シーンや、女装した殺人鬼が謎の組織と殺し合うといったインパクトある場面を次から次へと見せることが目的化しているようで、話自体の面白さを犠牲にしかねないのが惜しいところです。

 一方、『BORDER』は、『GO』で直木賞を受賞した小説家・金城一紀が原案・脚本を担当する異色作品。頭に銃弾を打ち込まれたことをきっかけに、事件で命を落とした死者の魂と会話ができるようになった刑事・石川安吾(小栗旬)が主人公の一話完結モノです。

 金城は過去に『SP』(フジテレビ系)という刑事ドラマも執筆しているのですが、さすが直木賞作家と言うべきか、一話一話の脚本が実に秀逸。初めは「死者と会話できる」という石川の特殊能力が最強すぎて、犯人が簡単に逮捕できてしまい、ドラマとして成立しないのではないかと懸念していました。ですが第2話では、女子高生6人を殺害した連続殺人犯が冒頭で自殺して幽霊となって石川の前に現れ、「もう一人、被害者をある場所に監禁している。24時間以内に捜し出さないと命はない」と挑発して、石川が走り回るといった展開になります。また第5話では、自分が死んだ理由がわからない男の幽霊と一緒に男の死因を捜査するなど、話のバリエーションがとても豊かなんです。

 また女性検視官の比嘉ミカ(波瑠)や、サイモン(浜野謙太)とガーファンクル(野間口徹)という天才ハッカーコンビなど、脇役も魅力的。次はどんなアイデアで攻めてくるのだろうかと、毎回楽しみなのです。金城は執筆にあたって海外ドラマを強く意識したそうですが、日本のドラマにしては演技や演出が抑制され、大人の雰囲気を醸し出しているのも魅力の一つ。その意味で、映画を意識した過剰な味付けの『MOZU』と、海外ドラマを意識した抑制的な『BORDER』の対決といった様相ですが、連続ドラマとしてとらえれば『BORDER』の圧勝と言えるでしょう。

 とはいえ、これほど毛色の違う作品が同じ時間に放送されているのは、日本の刑事ドラマがそれだけ多様化していることの証明ではないでしょうか。「刑事ドラマなんて、どれも似たようなもんだ」としばらく遠ざかっている方にこそ、是非、見比べてみていただきたい。そして来週は、どっちをリアルタイムで観るか一緒に悩みましょう。

週刊朝日  2014年6月13日号


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