東京都に住む会社員女性Mさん(53)は1年ほど前から、体のとある部分の変化に気づきニンマリほほ笑んでいる。

 きっかけは、50歳で受けた人間ドックだった。「要検査」「要受診」ばかりで、大腸ポリープも発見された。眼圧を下げる点眼薬「キサラタン」を1日1回は差すようにとお達しもあった。

「ポリープとって眼圧を薬で下げるようじゃ、『女子』とか言ってられないわ」

 と、落ち込むMさん。街でチラシをくれるのは居酒屋だけで、美容院のお兄さんからは避けられている気がしてならない。

 それから2年余りたったある日。出勤前に鏡を見て気が付いた。

「まつげ、長くなってる」

 実はまつげが短いのが若いころからの悩みだった。「目ヂカラ」なる言葉がもてはやされ、マスカラが化粧の要とされる昨今の風潮にはついていけなかったが、気が付けば、なんだか長く、濃くなっているまつげたち。なぜ、こんな事態に? そのとき頭をよぎったのが、点眼薬についての眼科医のひと言だった。

「点眼の後、顔を洗ってくださいね」

 目の周りが黒ずんだり、まつげが濃くなったりすることがあるからという。軽く聞き流し、点眼後の洗顔もいい加減にしていた。それが予告どおりの“副作用”である。ネットで調べると、キサラタンをまつげを長くする切り札として使う人までいるという。

 残念ながら周囲の反応はなし。ただし、積年の「目ヂカラがない」という悩みに解決の兆しがあらわれ、最近のMさん、点眼後の洗顔を全くしていない。

週刊朝日  2014年6月6日号