いまだ小保方晴子ユニットリーダー(30)との騒動が収まらない理化学研究所。しかし、その理研で、大きな問題となっているのは、小保方氏以外の研究者の論文にも、次々と画像の加工疑惑が持ち上がっている点だ。
4月25日には、小保方氏の研究不正の調査委員会の委員長である石井俊輔・理研上席研究員の過去の論文について画像の「切り張り」疑惑が指摘され、石井氏が委員長を辞任。これを受け、野依良治理事長は全研究者約3千人分の研究論文の自主点検を指示した。
さらに5月1日には、調査委の他のメンバー3人の論文にも画像加工などの疑いが指摘されていることが発覚。混乱が続く最中の同8日に理研が小保方氏の不正認定を確定させたため、理研の不正再発防止のために設置された改革委員会の岸輝雄委員長も「早すぎる。一般市民や私が十分にわかるようになってから出せばいいと思った」と不満を表明。会見でも、報道陣から「各委員への疑惑は、小保方氏への疑惑とどう違うのか」と問われた。
理研の川合真紀理事は、「画像の切り張りが不正であるかには、いくつかのチェックポイントがある。必ずしも疑義が上がっているすべてが同じウエートではない」と弁明したものの、疑惑は、とどまることなく拡大しつつある。
そんな中、本誌に調査委員長を辞任した石井氏について新情報が寄せられた。石井氏はインターネット上で指摘された04年と08年の二つの論文への疑義について、自身の研究室のホームページに「オリジナルデータが揃っており、不正はないと判断しています」と反論を掲載している。
ところが、すでに公になっている2本の論文以外にも、新たに疑惑が指摘されているという。分子生物学を専門とし、石井氏への疑惑について理研に情報提供したというある研究者がこう打ち明ける。
「石井氏が反論した二つの論文も含む全部で12の論文に『切り張り』などの加工が疑われる画像が使われていました。それらの疑惑について書面にまとめて4月24日に理研に郵送したのですが、広報に問い合わせても『届いていない』と主張する。配達記録つきで再送しましたが、今度は『届いたかどうかお答えできない』。疑惑をもみ消そうとしているのではないかと疑ってしまいます」
石井氏への疑惑について、理研は現在、本格調査に入るかを検討する予備調査を行っている。何本の論文について疑義が通報されているのかを本誌が広報に問い合わせても、「調査事項につき回答できかねます」と、明かさなかった。
前出の分子生物学研究者はこう憤慨する。
「他の調査委員はともかく、石井氏の論文の中には一つの画像を別の実験結果の画像として使い回しているものが複数あり、データのねつ造も疑われる。これが『単純な間違い』だという主張がまかり通ってしまうなら、小保方さんが悪いなどと言えなくなるし、日本の科学界は終わりですよ」
ほころびばかり目立つ「科学者の楽園」は、果たして再生できるのだろうか。
(本誌・小泉耕平、作田裕史)
※週刊朝日 2014年5月23日号より抜粋