開成高校校長・柳沢幸雄さん(左)と灘高等学校校長・和田孫博さん(右) (撮影/写真部・工藤隆太郎)
開成高校校長・柳沢幸雄さん(左)と灘高等学校校長・和田孫博さん(右) (撮影/写真部・工藤隆太郎)

 東京大学の高校別合格者数で3年連続の1位と2位だった開成(東京)と灘(兵庫)。その開成・柳沢幸雄校長と灘・和田孫博校長が顔を合わせ痛快に語り尽くした。

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――お二人とも、母校で校長になりました。生徒として、校長として知り尽くしている校風をそれぞれ教えてください。

和田:生徒が互いの実力を認め合い、ともに伸びていく雰囲気です。放課後、ある科目が得意な同級生に質問するなど、高3になるほど教室に残って一緒に勉強してますよ。

柳沢:開成も全く同じです。昔から「開成の受験は団体戦」と言われていて、クラスメートはライバルではありません。優秀な同級生は、ノートの取り方をまねしたり、いい参考書の情報を聞いたりする大切な「戦友」です。

 僕自身は開成に入った当時は優秀な同級生に出会って、「いやあ、すごい奴がいるな」と驚きました。人生で最初のカルチャーショックでした。

和田:僕も灘に入ったときにそう思いました(笑)。けれど、子どもは自分の得意な分野をひとつでも見つければ、それを糧にその他の能力も伸ばしていくことができます。得意なことは何でもいいです。スポーツでも音楽でも。それを軸に枝葉へ伸びていけばいいのです。英語の歌に魅せられて英語が好きになることもあります。大人は、子どもの自由な好奇心を邪魔してはいけません。虫が好きな子に、それをやめさせて「算数の勉強をしなさい」ではダメです。親も教師も、本人が努力してできるようになったことを見つけて褒めてあげましょう。これは甘やかしではありませんし、子どもの安心感と信頼感につながり、ますます力が伸びます。

柳沢:部活の加入率が非常に高いのも本校の特徴です。高2までの生徒1700人のうち、加入者は1700人以上。掛け持ちしている生徒がいるのです。授業は非常にレベルが高く、予習は絶対に必要ですし、定期テストも難しい。切り替えて時間をうまく使って勉強してます。

和田:灘も同じです。自由にさまざまな課外活動を行っています。創設者である嘉納治五郎の言葉「文武不岐」、つまり、勉学もその他のものも分けられないものだという精神は今も生きています。

――確実に学力を伸ばして、さらに開成や灘に入れる方法はありますか?

柳沢:いちばん簡単な方法は、算数をやることです。問題が解けた!という小さな成功体験を得やすく、そこを褒めてやると自信がついて他の教科も伸びます。開成の中学入試では、やると決めた方向に、自分を律することができる素質が必要です。入試はペーパーテストだけですが、それほど難しくない問題を大量に出し、国語ではうんと長い長文を読ませます。集中力と辛抱を測っています。

和田:僕は英語の教師だからこそ思うんですが、基本は日本語力だと思います。就学前に机に向かわせて知識を詰め込む必要はありませんが、本をきちんと読む習慣は必要です。漫画でもいいですし、ページをめくらないタブレット型でもいい。読む力がないと知識は蓄積できませんし、受験問題も読み解けません。

週刊朝日  2014年5月9・16日号より抜粋