室井佑月 オバマ大統領来日で思い出した“意地悪な先輩の命令” 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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室井佑月 オバマ大統領来日で思い出した“意地悪な先輩の命令”

連載「しがみつく女」

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 23日国賓として来日し、日米首脳会談や天皇、皇后両陛下主催の宮中晩餐会などに出席したオバマ米大統領。25日には韓国へ向け出発したが、作家の室井佑月氏は来日前の報道から、学生時代のこんな先輩を思い出したという。

*  *  *
 この原稿がみなさんの目に触れるときには、オバマさんが日本にやって来たあとなんだろうけど、どうなの? 少しは盛り上がったかしら? きっと、盛り上がったんだろうな。つーか、むりくり盛り上げたんだろう。

 テレビには安倍首相とのツーショットでオバマさんが満面の笑みを浮かべている映像が頻繁に流れ、新聞は「日米同盟・最強!」みたいな記事が溢れたのかもしれない。

 ま、あたしは騙されないけどね。

 4月17日付の産経新聞に、「オバマ大統領『国賓』なのに迎賓館宿泊せず 異例の対応…日程も難航」という記事が書かれてあった。「国賓待遇で23日に来日するオバマ米大統領が、迎賓館(東京都港区)に宿泊せず、都内のホテルを利用することが16日、分かった。国賓で迎えられる海外の要人は迎賓館に泊まるのが一般的で、オバマ氏の対応は異例。日本への到着時刻も確定しておらず、日米間では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の日米協議とともに大統領の“日程調整”も難航している」と。

 来日の1週間前だよ。まるで嫌々やって来るようじゃないか。どうせやって来るなら、気持ちよくおもてなしを受ければいいのに。

 新聞には、「『合理性』を重視するオバマ氏が使い勝手のいいホテルを選んだ可能性もありそうだ」とも書かれていたが、違うだろ。

 合理性を重視するならば、「どうせ日本に行かなきゃならないのなら、日本人を喜ばせてみっか」となるだろ。TPPについては、自分らの意見をごり押しする気満々なんだろうしさ。てか、入り時間や会談の時間をチャキチャキ決めてしまうことこそ、合理的ではないか。

 ほんとうに彼が合理性を追求するような男であったら、相手の事情も考えるわな。警備が大変だろうな、とかさ。

 あたしは学生時代のことを思い出してしまったよ。ヤンキーの先輩がおもむろに「ちょっと良いもの買ってきて」と命令したりするんだよ。

 ちょっと良いものであるから、残念なものも、すっごく喜ばせるものも、NGである。そう、向こうはただ意地悪をしたいだけ。

 ……と、この原稿を書いている19日付の毎日新聞に、「オバマ大統領補佐官『同盟国の防衛義務、疑う余地ない』」との記事を見つけた。

 なんでも、ライス米大統領補佐官が18日、ホワイトハウスで記者会見し、アメリカは日本の領土問題に特定の立場をとらない姿勢を改めて示したうえで、そう語ったそうな。

 これって「先輩の命令は絶対な」といわれているだけなんじゃ……。

 同記事には、ようやく決まった夕食の日程やらも書かれていた。

 ここでホッとするのが後輩の悲しさよ。立場が変わらない以上、おなじ明日はつづくのに。

※週刊朝日 2014年5月9・16日号


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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。

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